ネットやSNSでは「社会福祉士はやめとけ」というワードを目にすることがあります。
これは社会福祉士が精神的なストレスが多い、現場によっては給料が低いのに激務、という面があり、一部の人がそのように言っているようです。
社会福祉士を目指している人にとって「やめとけ」というネガティブな意見は、気になることでしょう。
確かに社会福祉士の仕事は楽なものではありませんし、きついと感じる現場があるのは事実です。
しかし社会福祉士は福祉業界で働く上で、キャリア形成にも非常に有効な将来性のある資格です。ネガティブな意見だけを鵜呑みにして諦めてしまうのはもったいないでしょう。
本記事では、社会福祉士は「やめとけ」と言われる理由を理解し、ポイントを押さえた職場選びについて解説します。
目次
なぜ「社会福祉士はやめとけ」と言われるのか?5つの理由
まずは、社会福祉士が「やめとけ」と言われる5つの理由を解説します。
給料が安いイメージがある
社会福祉士の平均給与は約403万円です。
過去の調査と比較して処遇は改善傾向にありますが、全産業平均と比較すると依然として低い水準にあります。
ただし、勤務先による給与格差が大きく、職場選びによっては平均以上の収入を得ることも可能です。
公的な調査データによると、社会福祉士の給与実績は以下の通りです。
- 社会福祉士の平均給与:403万円(令和2年度調査)
前回調査(平成27年度)の377万円と比較し、26万円上昇しています。 - 全産業の平均給与との比較:全産業平均は433万円(令和2年時点)であり、社会福祉士は全国平均を下回っています。
さらに、令和6年の全産業平均給与が478万円へと上昇している社会的背景を踏まえると、社会福祉士の給与も上昇基調にあるとはいえ、他産業とのギャップは依然として存在すると推測されます。
この「全産業平均との乖離」が、福祉業界全体の課題であり、「稼げない」というイメージの根拠となっています。
「給料が安い」というのはあくまで全体の平均値です。
実際には以下のように職場環境によって待遇は大きく異なります。
全体の平均と同等、もしくはそれ以上の給与を得ている従事者も一定数存在しており、「一概に全員が低いわけではない」という点が重要です。
社会福祉士の給料について詳しく知りたい方は、社会福祉士の年収についての記事もご覧ください。
出典:社会福祉士就労状況調査実施報告書(社会福祉振興・試験センター)
令和2年分 民間給与実態統計調査(国税庁)
令和6年分 民間給与実態統計調査(国税庁)
精神的ストレスが大きい
社会福祉士が対応する相談者は、生活に何らかの問題を抱えています。
虐待やDVといった重い問題を抱えているケースに当たることもあるでしょう。
他者の人生に関わる責任は想像以上に重く、負担に感じてしまう人も多くいます。
また、以下のような社会福祉士の精神的ストレスには以下のような原因もあります。
- 相談者の希望と医療機関や行政の意見が合わず板挟みになる
- 行き詰まっても相談できる相手がおらず孤独を感じる
- 担当するケースが多すぎて書類作成や雑務にいつも追われている
社会福祉士は単独で動くことが多く、一人で抱え込んでストレスをため込みやすい傾向にあります。
適切な業務量、上司や同僚に相談しやすい環境が整っている職場であれば精神的なストレスは大幅に軽減できるでしょう。
現場の社会福祉士のリアルな悩みを確認したい方は、社会福祉士を「辞めたい」と思う瞬間とは?の記事もご覧ください。
多職種連携で、調整役として「板挟み」になりやすい
社会福祉士は支援の中心的な「調整役(コーディネーター)」を担いますが、専門職同士の意見の対立や利害関係の調整において板挟みになりやすく、これが大きな精神的ストレスの原因となります。
①関わる機関と専門職の多さ
社会福祉士の業務は、単独で完結することは稀です。
クライアントの生活再建のために、以下のような多岐にわたる機関をつなぐハブの役割を果たします。
- 医療機関: 医師、看護師、リハビリ職
- 行政・福祉: 市役所、介護事業所、生活保護ケースワーカー
- 教育・司法: 教職員、弁護士、成年後見人
②「視点の違い」が生む対立構造
関わる専門家が多いほど、支援方針を巡る摩擦が生じやすくなります。
- 医療の視点: 「治療・安全優先」
- 福祉の視点: 「本人の自由・生活の質優先」
このように各専門職が「正義」を持って主張するため、意見が衝突することがあります。
その際、各所の間に入り、不満の矢面に立ちながら合意形成を図らなければならないのが社会福祉士です。
この「終わりのない調整業務」による疲弊が、離職を考える一因となっています。
は関係者に振り分けるなどして抱え込まないことが大切です。
「何でも屋」になりがちな業務線引きの難しさ
社会福祉士の本来の役割は「相談援助と連絡調整」ですが、「どこまで支援するか」の線引きが曖昧になりやすく、結果として本来の業務外のことまで引き受ける「何でも屋」状態に陥り、疲弊するケースが見られます。
①「本来の業務」と「判断が分かれる業務」の境界線
社会福祉士の業務は、所属する機関や契約内容によって解釈が大きく異なるため一概には言えませんが、現場でしばしば議論になる業務範囲の例として以下のような区分が挙げられます。
| 分類 | 具体的な業務内容の例 |
|---|---|
| 本来の業務 (コア業務) | ・相談者との面談(インテーク・アセスメント) ・支援計画の作成(プランニング) ・サービス事業所等との連絡調整 ・サービス利用状況のモニタリング |
| 判断が分かれる業務 (グレーゾーン) | ・通院や役所手続きへの同行 ・申請書類の記入や手続きの代行 ・家探しや私的なトラブル対応・交渉 ・頻繁・長時間の相談対応(傾聴のみの対応など) |
※以下はあくまで一例であり、職場の方針や個人の支援観によって「本来の業務」と捉える範囲は異なります。
②「頼めばなんとかなる」という周囲の依存
相談者の生活全体を支えたいという「支援者としての倫理観」と、業務範囲の曖昧さが重なると、以下のような状況が生まれやすくなります。
- 周囲の認識: 関係機関や相談者本人から「困ったらあの人に言えばやってくれる」と頼られる。
- なし崩し的な拡大: 「今回だけなら」と引き受けているうちに、それが既成事実化し、業務量が許容量を超える。
- 本来業務の圧迫: 手続き代行やトラブル処理に追われ、肝心の「支援計画の策定」や「モニタリング」がおろそかになる。
③燃え尽きを防ぐための「役割の明確化」
すべての要望に応えることは、一見良い支援に見えますが、結果として社会福祉士自身の心身の消耗(バーンアウト)を招きかねません。
「できないことは関係機関へつなぐ」「ここまでは支援するが、ここからは本人や他職種に任せる」といった業務の線引き(バウンダリー)を明確にし、組織全体で共有することが重要です。
試験の難易度が高く「割に合わない」と感じる
社会福祉士が「割に合わない」と言われる最大の理由は、「取得難易度の高さ(コスト)」に対して、資格がないとできない業務が法的になく、「給与や待遇への反映(リターン)」が限定的であるためです。
①取得までのハードルが非常に高い(ハイコスト)
社会福祉士は福祉系資格の中でも「最難関」と位置づけられており、受験までの道のりと試験内容の双方が過酷です。
- 受験資格の複雑さ: 福祉系大学での4年間の履修、または養成施設+実務経験など、受験資格を得るだけで数年単位の時間を要します。
- 膨大な出題範囲: 試験科目は全19科目(6科目群)に及びます。
医学、心理学、法学、社会学など多岐にわたり、かつ「0点の科目群が一つでもあれば不合格」という厳しい基準があるため、苦手科目を作れません。
出典:社会福祉士国家試験出題基準・合格基準(社会福祉振興・試験センター)
②苦労に見合わない「業務の非独占性」(ローリターン)
これだけの苦労を経て合格しても、現場の現実は以下のようになりがちです。
- 業務独占権がない: 社会福祉士は「名称独占資格」です。「社会福祉士」と名乗ることは制限されますが、相談援助業務そのものは資格がなくても行えます。
- 給与への反映が薄い: 資格の有無で業務内容に決定的な差がつかないため、資格手当が数千円〜1万円程度にとどまるケースも少なくありません。
| 比較項目 | 社会福祉士の実態 | ユーザーの心理 (割に合わない理由) |
|---|---|---|
| 参入コスト | 大(大学4年、19科目の試験勉強) | 「これだけ勉強したのに…」 |
| 業務権限 | 小(誰でもできる業務内容) | 「無資格でも業務ができる…」 |
| 給与待遇 | 中〜小(全産業平均以下) | 「給料が苦労に見合わない」 |
それでも「目指してよかった」と思える3つの魅力
社会福祉士は、「AIに代替されにくい将来性」、「独立を含む多様なキャリアパス」、そして「ダブルライセンスによる市場価値の向上」という3点において、非常にパフォーマンスの高い資格とも言えます。
圧倒的な将来性と「AI代替不可能性」
社会福祉士の需要は、一過性のブームではなく、日本の社会構造の変化に基づき長期的に拡大し続けることが確実視されています。
- 人口動態による需要増: 少子高齢化の進行(2025年・2040年問題)に伴い、介護・福祉ニーズの絶対量が増加しています。
- AIによる代替が困難: 複雑な家庭環境や感情への配慮が必要な「対人援助職(エッセンシャルワーカー)」は、AI技術が進化しても代替されにくい領域です。
- 支援領域の拡大: 格差社会の進行や社会的孤立(8050問題など)により、高齢者だけでなく貧困・児童家庭支援など、活躍のフィールドが広がっています。
キャリアパスの広がりと高収入へのルート
組織に属して働くだけでなく、経験を積むことで以下のような専門性の高いキャリアを選択でき、大幅な年収アップも可能です。
| キャリアパス | 概要とメリット |
|---|---|
| 独立型社会福祉士 | 【独立開業】施設に属さず、個人事務所を開設してソーシャルワークを行います。 リスクはありますが、実力次第で高収入を得られ、自由な働き方が可能です。 |
| 成年後見人 | 【権利擁護のプロ】判断能力が不十分な方の財産管理や身上監護を行います。 社会的責任が重い分、専門家としての報酬とやりがいが得られます。 |
| 管理職・施設長 | 【組織マネジメント】現場経験を活かして施設長やエリアマネージャーへ昇進するルートです。 運営・経営視点を身につけることで、給与ベースが大きく向上します。 |
社会福祉士のキャリアアップの可能性を知りたい方は社会福祉士のキャリアアップ・将来性の記事もご覧ください。
ダブルライセンスによる市場価値向上
社会福祉士資格をベースに他資格を掛け合わせることで、「希少な人材」として市場価値を高めることができます。特に相性が良いのが「精神保健福祉士(PSW)」です。
- シナジー効果: 現代の福祉現場では、貧困や介護の問題に「精神疾患」が絡むケースが増えています。両方の視点を持つことで、複雑な困難事例に対応できるスペシャリストとして重宝されます。
- 就職先の拡大: 精神科病院やメンタルクリニック、産業領域(メンタルヘルス)など、医療分野への転職も有利になります。
ダブルライセンスによって専門性を高めたい方は、社会福祉士と精神保健福祉士の違いについての記事もご参照ください。
「やめとけ」の真因は資格ではなく職場。環境選びで解決できる
社会福祉士に対する「給料が安い」「激務」というネガティブな評判の多くは、資格そのものの欠陥ではなく、「労働環境の悪い施設」や「自身の適性とのミスマッチ」に原因があります。
職場を変えれば「働き方」は変わる
社会福祉士の活躍の場は多岐にわたり、職場によって給与水準や休日の取りやすさは全く異なります。
「安定」や「やりがい」を求める方におすすめの代表的な2つの職場について解説します。
| 職場タイプ | このような方におすすめ | 特徴・メリット |
|---|---|---|
| 地域包括支援センター | ・安定した給与が欲しい ・土日休みでプライベートも重視したい | ・公的な性質が強く雇用が安定 ・予防事業が中心の相談業務 |
| 介護老人保健施設(老健) | ・医療連携のスキルを磨きたい ・成果が見える仕事がしたい | ・「在宅復帰」という明確な目標 ・多職種連携によるスピード感 |
地域包括支援センター:公的性質が強く「安定性」抜群
地域包括支援センターは、国が推進する「地域包括ケアシステム」の中核機関です。
- 役割: 高齢者が住み慣れた地域で暮らすための「総合相談窓口」および「介護予防マネジメント」。
- 配置基準: 社会福祉士・保健師・主任ケアマネジャーの3職種配置が義務付けられており、専門性が高く評価されます。
- 働くメリット:
- 公的安定性: 市町村または委託を受けた法人が運営するため、給与や待遇が安定しています。
- ワークライフバランス: 行政機関に準じて「土日祝休み」のケースが多く、無理なく長く働ける環境です。
地域包括支援センターでの仕事については地域包括支援センターでの役割の記事で詳しく解説しています。
介護老人保健施設(老健):多職種連携と「達成感」
病院と自宅の中間施設として、リハビリテーションを提供する施設です。
- 役割: 入院していた高齢者が、再び自宅で生活できるようにするための「在宅復帰支援」。
- 業務の特徴: 医師、看護師、リハビリ職(PT/OT/ST)と密に連携し、退所後の生活環境を整えます。
- 働くメリット:
- 明確なゴール: 入所期間が原則3〜6ヶ月と決まっているため、「在宅復帰」という明確な目標に向かって支援します。
- 高い達成感: 短期間で集中的に関わるためスピード感は求められますが、実際に利用者が自宅へ戻る姿を見届けられる点に大きなやりがいがあります。
介護老人保健施設(老健)については老健の働き方の記事も参考にしてみてください。
これから受験する方へ:難易度は高いが「取得価値」はそれ以上
社会福祉士は、合格率40〜50%前後(近年の合格率は50%以上)と簡単には取得できない難関資格ですが、「将来性の高さ」「転職の有利さ」「生涯現役」というリターンを考慮すれば、コストパフォーマンスは非常に高い資格と言えます。
「コスト(労力)」と「リターン(価値)」のバランス
受験を迷っている方は、以下の「かかる労力」と「得られる未来」を比較して判断してみてください。
| 比較 | 内容 | 実態とアドバイス |
|---|---|---|
| コスト (難易度) | ・合格率:約56~58%(上昇傾向) ・出題範囲:広範(19科目) | 【働きながらは長期戦】 かつて30%台だった合格率は上昇傾向ですが、依然として難関です。限られた時間での対策が必要です。 [詳細:社会福祉士試験の合格率・難易度を解説] |
| リターン (将来性) | ・需要:拡大傾向 ・資格:一生モノ ・待遇:職場次第で高水準 | 【職場選びが成功の鍵】 「割に合わない」と感じるのは、ミスマッチな職場にいる場合が多い。 適切な職場を選べば、安定収入とやりがいを両立できます。 |
需要は拡大の一途。迷っているなら「挑戦」
少子高齢化が進む日本において、福祉ニーズがなくなることはありません。
社会福祉士は景気に左右されにくく、一度取得すれば全国どこでも通用する最強のセーフティネットとなります。
働きながらの受験は決して楽ではありませんが、正しい学習計画があれば合格は十分に可能です。
「自分には無理かも」と諦める前に、まずは効率的な学習方法を知ることから始めてみませんか?
[あわせて読みたい:働きながら社会福祉士資格を取得するには?勉強法とコツ]
よくある質問:社会福祉士の「リアル」に関するQ&A
よくある質問:社会福祉士の「リアル」に関するQ&A
Q1:社会福祉士が「やめとけ」と言われる最大の理由は何ですか?
主な理由は「全産業平均と比較して給与が低いこと」や「人間関係や業務範囲のストレス」です。ただし、これらは「資格」の問題ではなく「職場環境」による差が大きいため、適切な職場を選べば解消可能です。
Q2:社会福祉士はAIに仕事を奪われませんか?
その心配は少ないと言われています。社会福祉士の業務は、複雑な家庭環境や心情に配慮した対人支援(エッセンシャルワーク)であり、AIによる代替が非常に困難な将来性の高い職業です。
Q3:未経験からでも働きやすい職場はありますか?
公的な性質が強く研修体制が整っている「地域包括支援センター」や、多職種連携でチームケアを行う「介護老人保健施設(老健)」などが、比較的安定しておりおすすめです。
まとめ
社会福祉士が「やめとけ」と言われる理由と、後悔しないための職場選びについて解説してきました。
職場選びを間違えれば、低賃金でストレスを抱えながら働くことになってしまいます。
そうならないためには、あなたに合った職場選びをすることが重要です。
給料や休日といった条件はもちろん、人間関係や職場の雰囲気などリアルな情報を知ることで、後悔しない職場を選びやすくなるでしょう。
社会福祉士の就職・転職では業界に特化したエージェントを活用するのがおすすめです。
ケア人材バンクでは業界専任のエージェントが、求人票だけでは分からないリアルな情報を提供しています。
社会福祉士の職場選びで後悔したくない方は、ぜひ一度相談してみて「自分に合ったホワイトな職場」の選択肢を知ることから始めてみてはいかがでしょうか。
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