社会福祉士制度ができて30年あまりが経過し、社会福祉士の活躍の場は福祉分野にとどまらず、医療分野や教育分野にまで広がりを見せています。
現在、いずれかの現場で活躍中の社会福祉士の皆さんの中には今後、「同じ分野で専門性を強めていくべきか?」「さまざまな分野で経験を積んでキャリアアップを目指すべきか?」お悩みの方も少なくないでしょう

ここでは社会福祉士のキャリアプランについて、事例を挙げながら、キャリアアップについての考え方をいくつかご紹介します

社会福祉士の転職相談受付中

社会福祉士転職サポートに登録(完全無料)
この記事の要点まとめ
  • 社会福祉士の市場価値や求人の状況、どのような活躍の場があるかを確認
  • 社会福祉士としてのさらなるキャリアアップのために考えたい3つのポイント
  • 社会福祉士のキャリアパス、キャリアプラン事例の紹介

 社会福祉士の資格を活かせる職場は?

公益財団法人社会福祉振興・試験センターが行なった社会福祉士有資格者への「就労状況調査」によると、有効回答数100,281人のうち、77,576人が福祉・介護・医療分野で仕事をしており、およそ7~8割を占めます
多くの社会福祉士が、資格と資格取得のために身につけた知識・スキルを生かせる職場に勤めているとも言えそうです。

 社会福祉士はどこで働いている?

社会福祉士はどの分野、または施設で働いているのでしょうか。まずは「社会福祉士の就労先施設の構成グラフ」を見てみましょう。

  1. 高齢者福祉関係39.4%
  2. 障がい者福祉関係17.7%
  3. 医療関係15.1%
  4. 地域福祉関係8.4%
  5. 児童・母子福祉関係8.2%
  6. 行政機関6.7%
  7. その他4.5%

出典:就労状況調査(公益財団法人社会福祉振興・試験センター)

では、主に就労先比率の多い施設形態から、社会福祉士の活躍の場について解説していきます。

高齢者福祉関係

施設の数や必要とされる人員など、もっとも多いのは高齢者福祉関係です。
高齢者関係の施設には、以下の介護福祉施設で生活相談員として勤務するケースが多いです。

  • 特別養護老人ホーム
  • 介護老人保健施設
  • デイサービスセンター

生活相談員は主に利用者の日常生活の困りごとに関する相談援助業務を行います。また、施設の入退所に関する手続きや行政など関係機関との連絡・調整も大切な仕事です。

障がい者福祉関係

障がい者福祉には身体障がい、知的障がい、精神障がいの3分野があり、施設にも以下のように「生活支援」「就労支援」に分けられます。

生活支援就労支援
生活訓練施設就労継続支援A型事業所
日中の活動支援を行うデイサービスセンター就労継続支援B型事業所
基幹相談支援センター

社会福祉士はこれらの施設で生活支援員や就業指導員などの職種で働くことが多いです。
また、近年ニーズが増えているのが児童発達支援施設や放課後デイサービスの指導員です。
ここでは生活相談援助を行うほか、発達障害を持つ障がい児に発達を促す遊びを行います。ただし、「児童指導員」として勤務する場合は「児童指導員任用資格」が必要です。

医療関係

病院で医療費や退院後の生活相談に乗る医療ソーシャルワーカーとしても、社会福祉士が多く活躍しています。 主に以下のような医療機関での勤務となります。

  • 病院
  • 診療所
  • クリニック
  • 精神障がい分野のデイサービス

精神医療関係の医療機関で実務経験を積んだ後、精神保健福祉士を取得しダブルライセンスを目指す人もいます。

児童福祉関係

児童福祉分野の施設・機関でも、以下のような施設で社会福祉士が活躍することが増えてきました。

  • 障がい児施設
  • 児童養護施設
  • 母子生活支援施設
  • 児童自立支援施設
  • 児童家庭支援センター

指導員として働くほか、家庭児童相談員として相談援助業務を行います
児童への支援を行うという性格上、活躍の場は福祉施設や相談機関にとどまらず、教育機関で活躍するケースもあります。例えば近年配置が急がれているスクールソーシャルワーカーです。政府は学校内だけで対応しきれないいじめや児童虐待の問題に対応できる人材を早急に配置する方針を出しています

スクールソーシャルワーカーになるには、社会福祉士の資格取得後、日本社会福祉士養成校協会が認定するスクールソーシャルワークの教育課程を修了する必要があります

地域福祉関係

地域福祉とは、地域で誰もが自立し豊かに暮らせるようにするために、住民ニーズを発見し「地域のニーズに合わせた福祉サービスを作り出し、提供する」ことを言います。
このような役割は社会福祉協議会で地域福祉専門員が担います

地域福祉専門員は住民のニーズを調査したり、住民の声を聴きやすくするためにさまざまな地域活動を支援したり、必要な福祉サービスを作り出していくという仕事をします。

行政機関

行政機関でも多くの社会福祉士が活躍しています。代表的なのは以下の施設です。

  • 福祉事務所
  • 児童相談所

福祉事務所ではケースワーカーとして、生活保護を受給している人たちだけでなく、これから生活保護を受けたいという人々に対しても相談援助を行います

ケースワーカーになるには「社会福祉主事任用」資格を取得し、地方公務員試験に合格する必要があります。ただし、地域によっては会計年度職員として、1年単位で勤務できる職員を募集することがあります。この場合は面接などの採用試験に合格すればケースワーカーに就くことができます。

社会福祉士の転職相談受付中

社会福祉士転職サポートに登録(完全無料)

【教えてキャリアコーディネーターさん】社会福祉士のよくあるキャリアチェンジは?

社会福祉士を活かした仕事の選択肢はさまざまですが、どのような転職が多いのか?ここでは4つの事例を紹介します。

MSW・相談員→地域包括の社会福祉士

「より広域的な仕事がしたい」「社会福祉士として専門的な仕事がしたい」という理由で病院のMSWや特養などの施設相談員から地域包括支援センターの社会福祉士に転職するケース。このケースは「施設から地域」へのキャリアチェンジと言えます。
クライアントの地域や在宅ならではの問題に向き合って取り組める魅力があります。

地域包括では社会福祉士の専門性を生かして、成年後見人などの権利擁護問題に取り組む機会もあるでしょう。

介護職・相談員→MSW

特定の分野の相談員経験を生かして、病院や診療所などのMSWに挑戦したいというケース。特に最初に高齢者施設に就職し、介護職や相談員を経験した人に多く、社会福祉士の資格取得を機に、高齢者以外の分野に関われるMSWの経験を積んでキャリアアップを考える方も多いです。
高齢者施設で得た経験を生かした相談業務を通して、さらなるスキルアップが狙えます。

介護職・支援員→サービス管理責任者(サビ管)

大学の実習先などで経験したことがあるなど、障がい福祉に関心のある人が支援員や介護職などの実務経験を積んだ後、サビ管にキャリアアップを考えるケースも少なくありません。指定の施設での実務経験を1年〜8年(各自のキャリアによる)積んだ後、指定の研修を受講することでサビ管になることができます。
これを機に転職し、障がい者分野でのスキルアップ、そして施設管理者への道を開くこともできるでしょう。

介護職・支援員→児童発達支援管理責任者(児発管)

障がい者福祉と同様、児童分野への興味関心のある人が児発管を目指すケースも増えています。指定の施設での実務経験を1年~8年(各自のキャリアによる)積んだ後、指定の研修を受講することで児発管になることができますが、指定の研修に申し込むには「児発管として働く事業所」経由で申し込む必要があります。
児童発達支援施設へ転職し、児発管の研修受講後、さらなるキャリアアップを目指すケースとなります。

【教えてキャリアコーディネーターさん】職場施設別での社会福祉士のキャリアアップは?

「この分野でスキルアップしたい」という思いがある方もおられるでしょう。
ここでは特定の分野においての、または特定の施設においてのキャリアアップ例について紹介します。

医療機関でのキャリアパス

医療機関には、高齢者中心の療養型の病院、一般病院、精神科をメインとする病院などさまざまなものがあります。たとえば、精神病院を経験後、精神科を含む総合病院への転職を希望する(逆もあり)というように、医療機関から医療機関への転職も仕事の幅を広げる転職が可能です
特に病院では転職の際、MSW経験がある人はとても重宝されます。過去の経験によっては主任、室長待遇での転職が可能な場合も。

MSWのキャリアラダー例

MSW→相談室主任→相談室室長→事務長

介護老人保健施設(老健)でのキャリアパス

老健相談員の中には、施設入所・ショートステイなどの担当と、デイケア担当に分かれていることもあります。
また、介護職として働いている社会福祉士が相談員としての経験を積みたいという転職理由を持つ人も少なくありません。老健の入所相談、デイケアを経験後、いずれは事務長を目指すのもいいでしょう

老健相談員のキャリアラダー例

相談員→系列の病院やデイケアなどでスキルアップ→主任→事務長

特別養護老人ホーム(特養)でのキャリアパス

特養は、運営母体によって待遇や雰囲気が違います。社会福祉法人の施設から、公共団体が運営する施設に転職するということもあります
また、転職のタイミングで介護職から相談員への転職も考えられます。この場合は実務経験5年を目途に、介護支援専門員資格を目指すことを考えるといいでしょう。

特養介護職からのキャリアラダー例

介護職→相談員→系列のデイサービスなどでスキルアップ→主任→事務長

地域包括支援センターでのキャリアパス

地域包括支援センターでキャリアアップするには、各機関との連絡調整やカンファレンスなどでネットワークを作ることが大切です。そこで信頼関係を築き上げていくことで転職のチャンスをつかみやすくなります。
また、現在の職場でキャリアを積み重ね、センター長をめざすのもいいでしょう。管理職に就くことで、より広域的な仕事を作っていくことができるようになります

地域包括の社会福祉士のキャリアラダー例

社会福祉士→センター長

障がい福祉分野でのキャリアパス

障がい福祉分野には、就労支援や生活支援など、施設によって支援内容の違いがあります。「生活支援施設の次は就労支援施設で働く」というようなキャリアパスを組み立てていくのもいいでしょう
そして、その過程でぜひ、サビ管の資格取得を考えてみてください。障がい者施設を自分で立ち上げることを視野に入れてみるのはいかがでしょうか。

障がい福祉分野のキャリアラダー例

支援員・相談支援員→サービス管理責任者→相談支援専門員or独立

児童福祉分野でのキャリアパス

放課後等デイサービスや児童発達支援施設は現在増加しています。児童福祉分野でのキャリアアップを考えるならまずは転職し、ぜひ児発管資格の取得を考えてみてはいかがでしょうか
また、スキルアップを続けたあとは施設管理者をめざす、または独立するなどのキャリアプランが見えてきます。

児童福祉分野のキャリアラダー例

児童指導員→児童発達支援管理責任者→相談支援専門員or独立

社会福祉士の市場価値は?

社会福祉士は、受験資格を得るために学んだ内容からもわかるように、社会福祉全般におけるスペシャリストです。国家試験に合格し、社会福祉士資格を取得した人はベースとなる社会福祉の知識や相談援助技術を持ち合わせている、と言えるでしょう。

少子高齢化社会を迎え、社会全体で高齢者や児童、障がい者を支援する必要性に迫られている現在、社会福祉のスペシャリストのニーズは年々高まっています

社会福祉士は何人ぐらいいる?

社会福祉士は令和5年6月末現在で28万6,740人が登録しています。毎年 1万人から1万1000人の社会福祉士が誕生しています

社会福祉士登録数推移グラフ
出典:社会福祉士の現状(厚生労働省)

社会福祉士の有効求人倍率は高い?低い?

有効求人倍率とは、1人の求職者に対しどれだけの求人があるかを示す指標です。
社会福祉士単独の有効求人倍率は、厚生労働省や福祉人材バンクの統計から見つけることができませんでしたが、社会福祉士資格を使う・必要とされやすい職種からおおよその数字を見てみましょう。

厚生労働省の有効求人倍率のデータ元はハローワークに寄せられる求人です。ここでは「福祉ソーシャルワーカー」を社会福祉士の求人として見てみましょう。
「福祉ソーシャルワーカー」の有効求人倍率は令和4年度で、1.07となっています

出典:厚生労働省職業情報提供サイトjobtag「福祉ソーシャルワーカー」

福祉人材バンクのデータによる職種別の有効求人倍率のうち、社会福祉士資格を必要とされやすい職種は「相談・支援・指導員」「社会福祉協議会専門員」でしょうか。
過去10年の職種別有効求人倍率を見てみましょう。

平成23年平成24年平成25年平成26年平成27年平成28年平成29年平成30年令和元年令和2年令和3年
相談・支援・指導員0.410.630.831.051.281.51.531.491.61.81.87
介護職(ヘルパー以外)1.221.92.473.273.974.835.355.575.575.164.77
介護支援専門員0.391.371.631.81.811.971.971.852.152.543.04
社会福祉協議会専門員0.020.020.020.040.050.050.050.070.090.110.12
過去10年間の有効求人倍率

出典:福祉人材センター・バンク 職業紹介実績報告

令和3年度実績の平均でみる有効求人倍率は「相談・支援・指導員」で1.87倍「社会福祉協議会専門員」は0.12倍となっています。
「相談・支援・指導員」の有効求人倍率は年々増え続けてはいるものの、介護職の4.77倍や介護支援専門員の3.05倍に比べると少なめの傾向があることがわかります。
常に多くの分野で求人が多いわけではないので、今後の自身のキャリアパスを積み重ねるにあたっては、どの分野で何をしたいかを、自信の経験も踏まえて考えることが重要です。

社会福祉士の転職相談受付中

社会福祉士転職サポートに登録(完全無料)

社会福祉士のキャリアを考える上で重要なこと

「社会福祉士として今後、どうなりたいか。」

これは今後の自身のキャリアパスやキャリアプランを考えるうえでとても大切なことです。
これまでの経験を整理し、自分ができることをあぶり出した上で、「なりたい自分」を具体的にイメージしましょうこうすることで「今の自分に何が必要か」「本当にやりたい仕事は何か」が見えてきます
ここでは3つのアプローチについて紹介します。

今までの経験を整理する

社会福祉士資格を取得後、みなさんそれぞれの福祉現場でさまざまな経験を積んでこられたと思います。今後の新たなキャリアの積み上げを考えるうえで、自分自身がどこで、どんな経験を積んできたか、一度棚おろしをしてみましょう
福祉現場の経験だけでなく、医療事務や塾講師のアルバイトなど福祉関連以外の職歴があればそれも含めてかまいません。

今後やりたいことを明確にする

今後、こんな仕事をしたい、こんな分野で働きたいという思いがあれば、それを大事にしてください。以下のように、より具体的な理由も考えると、更に明確にやりたいことが見えてくるでしょう。

  • これまでは知的障がいの就労支援施設で働いていたけど、少し視点を変えて児童の発達支援施設の経験を積みたい
  • 施設の生活相談員として相談援助に携わってきたけれど、地域包括支援センターで地域の視点からクライアントに関わりたい

ただし、あまりに具体的すぎると、特定の分野や施設の求人にしか目がいかなくなってしまうこともあり得ます。
自分が今後、やりたい仕事を明確にする過程で、やりたいことの「キーワード」を見つけておくと、柔軟な視点で就活ができるようになります

将来どうなりたいかを考える

あなたは10年後、どんな自分になりたいですか?

今すぐの転職も大切ですが、10年ぐらい先の自分をイメージすることも、キャリアプランを立てる上で大切です

今の職場で主任や管理職を目指す、違うジャンルの仕事を経験し、キャリアを重ねてそこでさらなる飛躍を考えるのもアリでしょう。また介護支援専門員や精神保健福祉士など、別の資格を取ってスキルアップする、成年後見人になるための研修を受けて将来独立して新たな事業を始めるという考え方もあります。
考えようによっては、とてもワクワクするプランニングになるかもしれません。

社会福祉士の転職相談受付中

社会福祉士転職サポートに登録(完全無料)

 まとめ

いかがでしたか?

社会福祉士はあらゆる福祉分野の専門家として、ベースになる知識と技術をもつとされる資格です。キャリアの積み方によっては「オールマイティな専門家」を目指すことも「特定分野のスペシャリスト」を目指すことも可能です

それだけに、どんなキャリアプランを設計し、どのように経験を積み重ねてキャリアアップしていくかはさまざまである、と言えるでしょう。自分の適性や興味・関心、社会のニーズにより多種多様なキャリアプランが出来上がるかもしれませんね。

「ケア人材バンク」では、社会福祉士の転職を応援し、相談員専門の転職エージェントがキャリアプランを含め、ご相談いただけます。以下登録ボタンから無料登録ください

社会福祉士の転職相談受付中

社会福祉士転職サポートに登録(完全無料)