社会福祉士として働いていると、多忙な業務や職場の人間関係、利用者様の対応などで悩み、自分にこの仕事は向いていないのではないかと悩むことがあるかも知れません。
待遇や業務量が割に合わないと感じ、モチベーションが維持できず、キャリアチェンジを考えることもあるでしょう。
このように心身が疲弊してしまう理由と対策、転職をする際のポイントついて考えてみましょう。
目次
社会福祉士を辞めたいと感じる主な理由は?
社会福祉士として就職したものの、思い描いていたイメージとの違いに戸惑い、業務の多忙さや人間関係に疲弊してしまうこともあります。
どういった理由で辞めたいと感じるのか、具体的に考えていきましょう。
業務量や責任が重く、疲れ切ってしまう
業務が多忙になってしまう要因には下記のような理由が考えられます。
業務の幅が広い
社会福祉士が対象とするクライアントの年齢層は児童から高齢者まで幅広く、支援におけるアプローチも様々です。
また、相談業務のほかにも記録や申請書類の作成など、業務内容も多岐にわたっています。

人手不足による担当業務の増加
福祉業界は慢性的に人手不足であるため、一人が担当するケースが増加し、多忙をきわめることもあります。
中には、複雑な事情を抱えていることから、解決が困難で対応に時間を要することもあります。そうしたことから労働時間が長くなり、疲弊してしまうのです。
勤務の不規則さ
勤める施設の形態によっては夜勤があるなど、シフトが不規則な場合もあります。
そうした状況から、心身の状態を崩してしまうこともあります。
給与と業務にギャップがある
民間企業全体の平均年収は433万円。
それに対し、同年調査の社会福祉士の平均年収は403万円というデータがあり、他の業種より低い結果となっています。
管理職や経営者になると収入アップも望めますが、小規模な事業所ではキャリアのポストがなく、キャリア形成に限界がある場合もあります。
そのため、昇給やキャリアアップが難しく、将来性に不安を感じる方もいるでしょう。
給与や賃金に「満足している」「やや満足している」と回答した社会福祉士は35%に留まっています。
多忙な業務量に見合わない報酬だと感じる声も少なくありません。
出典:社会福祉士就労状況調査結果報告書
出典:令和2年分民間給与実態統計調査|国税庁

人間関係でストレスが生じる
社会福祉士は、対人援助の仕事であることから、クライアントだけでなく、職場の上司や同僚など、さまざまな人間関係の中で悩むことも多いでしょう。
クライアントとの関係での悩み
クライアントの中には、怒りや不安、敵意を表したり、拒絶したりする人もいます。
割り切って業務にあたることができればよいのですが、繰り返し対応するうちに、否定的な言葉を真に受けて疲弊してしまうことがあります。
また、利用者様のご家族や地域の関係者など、関わる人がたくさんいる場合は、さまざまな思惑の板挟みになることもあります。
一生懸命にクライアントと向き合うあまりに、プライベートの時間でも仕事のことを考えてしまい、それが続くと、精神的・情緒的に疲労感を伴い、バーンアウト(燃え尽き症候群)やうつ病などのリスクになります。
職場の同僚や支援者との関係での悩み
社会福祉士の退職理由に関する調査では、「職場の人間関係」は「心身の健康状態」に次ぐ第2位となっており、退職理由の大きな割合を占めています。
所属している組織の同僚や上司との関係、指導体制が整っていないことに悩む人が多くいると考えられます。
また、対人援助の仕事はチームで行うことも多いので、チーム内の人間関係で悩むこともあります。
チームはさまざまな専門職で構成されていることも多く、基盤としている専門性や視点、価値観が異なっていることから、方針や意思統一が難しいと感じることもあるでしょう。
たとえば、医療関係者と福祉関係者で支援方針が異なる場合もあるかも知れません。
それぞれの視点や専門性に違いがあることを認めたうえで一緒に仕事をしていく必要があります。
社会福祉士を辞めたいと思ったときの対策
社会福祉士としての仕事を辞めたいと感じた時、退職する前にできることはないか、考えてみましょう。
業務改善やタイムマネジメントをする
業務量が多すぎるときは、時間管理を工夫したり、業務の優先順位をつけたりして、消耗を防ぎましょう。
業務を効率化するためには、下記のような工夫があります。
- 記録文書をテンプレート化する
- デジタルツールの活用(チャットアプリ、スケジュール管理アプリなど)
そうした工夫で対応できる範疇を超えるほど業務が多く、手が回らなくなっている場合は、上司や職場の担当部署などに相談し、業務や役割分担を見直していくようにしましょう。
自身の感情をコントロールする
社会福祉士の仕事は感情労働であると言われており、さまざまな感情と向き合う仕事です。
自身の感情をうまくコントロールできないと、バーンアウトしてしまうだけでなく、同僚や利用者様への不適切な対応にも発展しかねません。
過度な感情移入や共感に伴う疲労を防ぎ、感情をコントロールするには自己覚知が重要です。
たとえば、自分がアルコール依存症の父親に振り回されて苦しんだ場合、アルコール依存症の利用者様にいらだちを覚えてしまったり、自分が母の介護で苦労したので、同じ状況のクライアントに勤務時間を超えてでも寄り添おうとしてしまったりするなどです。
また、完璧主義で自分を追い詰める考え方をしている場合は、意識的にそれらを手放していく必要があります。
セルフケアを取り入れ、しっかり心身を休養させる時間を持ちましょう。
紙に感情を書き出すなど、一度心の中の気持ちを外在化したうえで俯瞰してみることが有効です。
客観的に自分の考えを見つめることで、必要以上に自分を責めていないか振り返ることができます。
自己覚知とは…自身の感情を客観的に振り返ることを通して、状況を冷静に捉えなおし、なぜこのような気持ちになるのかを知ることです。
一人で抱え込まない
支援の中で行き詰まった課題については、スーパービジョンを受けるなど、周囲の力も借りるように心がけましょう。
スーパービジョンを受けることで、自己覚知ができ、専門性が磨かれ、自信をもって対応しやすくなるでしょう。
人間関係で悩んだ場合も、上司や同僚など信頼できる人に相談することで、思いもよらない気づきが得られたり、部署の異動など具体的な対応をしてもらえることもあります。
また、悩んでいる内容がハラスメント(パワハラ・セクハラなど)の場合は、上司やハラスメントの相談窓口に相談することも1つです。
各事業所には、ハラスメントの相談窓口を設置することが義務付けられています。
また、状況によっては都道府県の総合労働相談コーナーなどの窓口に相談することもできるでしょう。
スーパービジョンとは…経験の浅い職員(スーパーバイジー)が、経験の豊富な職員や管理責任者(スーパーバイザー)に助言や指導を受けることです。
待遇で悩んだ時も一度相談してみる
上司や管理職に待遇面での希望や不満を正直に伝えることも大切です。
上層部は現場の現状を知らない場合もあるからです。
伝えるときは、不満として伝えるのではなく、業務改善の提案として伝えることも重要です。
心理的負担が多い場合などは、担当業務の変更を交渉するのも一つでしょう。
職場内の異動によって労働条件や雰囲気が大きく異なる場合もあります。
また資格手当がある職場の場合、資格を取得することで待遇改善が図れることもあります。
社会福祉士の転職・後悔しないために考えるべきポイント
自分なりに努力しても、どうしても状況が改善しない場合などは、転職を視野に入れることもあるでしょう。
その際に後悔しないためにはどうすればいいかを考えていきましょう。
「本当にやりたい仕事」が何かを整理する
自分がどのような働き方を望んでいるのかを明確にしたうえで転職を考えなければ、仮に転職をしても、次の職場でも満たされない気持ちを抱えることになります。
たとえば、以下のような点を分析したうえで、転職の軸を考えていく必要があります。
- 今の職場で負担に思っていることは何か
- どういった点が合わなかったのか
- 現職ではそれらを変えることができないか
「嫌だから辞める」ではなく、ステップアップ、キャリアアップにつながる働き方は何かを考えていくようにしましょう。
明確にしておきたい希望項目には、たとえば下記のようなものがあります。
- 待遇面…休暇日数、手当や賞与の有無、福利厚生など
- 人間関係…組織の風通し、スタッフの年齢層など
転職先のリアルな情報を集める
社会福祉士就労状況調査結果報告書では、社会福祉士が就職するにあたってその職場を選択した理由は「やりたい仕事だった」が1位となっています。
福祉の仕事は幅広く、法人や業種によって対象とする人も、取り組む業務もまるで違ってしまいます。
自身が大切にしたい価値とは何かを明確にし、どのようなことを仕事で取り組んでいきたいかを考えることで、合わない職場に入るリスクを減らせます。
たとえば、
「業務が多忙すぎて利用者様とじっくり関われないことが辛い」
「もっとゆっくり向き合える仕事がしたい」
と思うなど、自身が実現したい価値観、共感できる方針を考えるようにしましょう。
確認すべきポイントには、以下のようなものがあります。
- 給与や休みが条件に合っているか
- 仕事の内容や働き方は現在のライフスタイルと合っているか
- 事業所の理念と自身の価値観がマッチするか
いくら条件が良くてもやりがいを感じられないと、モチベーションが低下し、結果的に退職を繰り返すことにもなりかねません。
条件や求人票に掲載されている情報だけでは実際に働いたときのイメージが持ちづらいこともあります。
実際に働いている人の声を聞くチャンスがあればぜひ話を聞くようにしましょう。

数年後のキャリアアップをイメージする
転職をするのであれば、目先のことだけではなく、次のステップにつながる実績が積めるかといった視点を持つことも重要です。
たとえば以下のようなキャリアアップ案が考えられます。
今後、社会福祉士としてどのようにキャリアアップしていきたいかを考え、転職先を選ぶようにしましょう。
- 取りたい資格を取得するための経験が積める
- 複数の事業を展開しており、さまざまな分野での経験が積める
- 全く違う分野や、新たな社会課題への支援に挑戦する
- マネジメントや管理するポジションに就く未来がある
- 行政職員を目指す
- 独立・起業する
転職以外の選択肢も視野に入れる
本当に転職しか道がないのか考えましょう。
現在の職場で得られるものや、改善の余地はないでしょうか。
また、職場によっては副業を認めているところもあります。
現職での収入を得ながら、副業で自己実現を果たすという方法もあります。
多様な働き方についての情報収集も重要です。
【体験談】社会福祉士の転職エピソード
実際に転職で悩んだ社会福祉士のエピソードを紹介します。
Aさんは、社会福祉士の資格を取得し、比較的大きな法人に就職しました。
しかし、配属されたのは、夢見た相談援助業務ではなく総務課。法人運営に関する事務仕事や団体との調整が主な業務でした。
その後、結婚・産育休を取得しましたが、やはり相談業務に従事したいとの思いが捨てきれず、障がい福祉サービスを行う事業所に転職。
初めての相談業務に戸惑いながらもやりがいを感じています。
一方で、新たな職場は小さな事業所であるため、以前の法人よりも給与が下がり、子育てに関する休暇制度も少なく、家庭との両立には悩む結果となってしまいました。
自身のライフスタイルなども踏まえながら、今の自分にはどのような働き方が合っているかなど、多角的に検討し、転職先を選ぶことが重要だと思ったそうです。
まとめ
社会福祉士の仕事には、大きなやりがいと同時に心身に負担のかかる側面もあります。
辞めたいと感じたことをきっかけに、自身の働き方や価値観をしっかりと見つめなおしましょう。
場合によっては、働く場所を変えることで社会福祉士としての充実感が得られ、キャリアアップにつながる場合もあります。
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