医療ソーシャルワーカー(MSW)として、退院支援業務に関わっていると、調整が難航したり、病院と患者さんの間で板挟みになったりと悩むことも多いのではないでしょうか

本記事では、MSWが行う退院支援業務について、退院調整の流れと多職種連携のポイントを解説します。

この記事の要点まとめ
  • MSWの退院支援業務は退院後の患者さんの生活を支える業務
  • 連携する職種の立場を理解すること、早めに連携をすることで多職種連携はうまくいく
  • MSWとして長く働くためには自分に合った退院支援業務ができる病院を探すことが重要

MSWが行う「退院支援」とは?基本の業務フロー

MSWが行う退院支援とは、患者さんの退院後の生活を一緒に考え、サービス等の調整を行う業務です。
退院後の生活には、在宅復帰、施設入所、転院などがあり、患者さんの病状や希望、家族の有無、経済状況など様々な状況を考慮して決めていく必要があります。

退院支援の流れについて解説します。
MSWの仕事内容については、医療ソーシャルワーカー(MSW)とは?の記事もご覧ください。

退院支援業務の流れ
  1. スクリーニング
  2. 初回面談(インテーク)
  3. アセスメント・プランニング
  4. 社会資源の調整
  5. カンファレンス
  6. 退院・フォローアップ

スクリーニング

スクリーニングとは、入院早期又は入院前の患者さんの中から退院困難になりそうなケースを抽出する作業です。
例えば、以下のようなケースが退院支援の対象となり得ます。

  • 家族や頼れる人がいない
  • 認知症や精神疾患により判断能力が低下している
  • 経済的に困窮している
  • 退院後に介護サービスが必要になる

スクリーニングは退院支援を行うかどうかの判断を行う作業であり、この段階で退院後の方針などを考える必要はありません。

初回面談(インテーク)

初回面接(インテーク)では、患者さんやご家族の状況や意向を確認します。

インテークで重要なポイントは、患者さんやご家族とラポールを形成することです。
ラポールとは、「信頼関係」のことで、MSWに対して「この人なら信頼できる」と思ってもらえることを目指しましょう。

必要な情報を全て聞き出すことばかりに集中してしまうと、事務的な質問だけになり患者さんやご家族に不信感を与えてしまう恐れがあります。
焦らずに、まずは患者さんやご家族の不安を受け止め、安心して話せる関係を形成していきましょう。

アセスメント・プランニング

インテークで得た情報を元にアセスメント(情報整理)を行います。

患者さんとご家族が抱える課題を抽出し、退院後に必要なものを判断します。
アセスメントでは、患者さんの希望(暮らしたい場所や大切にしているもの)を反映させましょう
患者さんの状況によっては、文字や写真などを活用した意思決定支援も行うことが必要です。

アセスメントの見立てを元に、退院に向けた支援の道筋を立てる作業がプランニングです。
プランニングでは以下の流れで退院支援計画を作成します。

退院支援のプランニングの流れ
  1. 目標設定
    在宅か施設入所か、など。本人や家族の状況、希望をすり合わせて決定する。
  2. 優先順位の判断
    介護保険申請支援と住宅の改修かどちらが先か、など優先するべきことを決める。
  3. 支援内容の決定
    転院調整や介護保険申請支援など、具体的な支援内容を決める。

プランニングでは他職種との連携が重要です。
医療、介護、リハビリといった専門職の視点がなければ、患者さんにとって「実現が難しい」「適切ではない」といった計画になってしまう可能性があります。

MSW退院支援業務-プランニング

社会資源の調整

退院に必要な社会資源の調整を行います。

例えば、退院後に介護施設に入所するのであれば、介護保険申請支援や、ケアマネジャーの選出をします。

社会資源の調整とは、単なるサービス紹介ではなく、退院後の生活がうまく回るためにつなげることです。
退院してすぐに利用できるように、制度の申請や、行き先(自宅や施設)の状況確認など、必要に応じて環境を整えるなど調整を行います。

カンファレンス

カンファレンスでは、他職種が集まって情報共有と支援方針の統一を行います。

参加メンバーは、基本的にMSW、医師、看護師、リハビリ職となり、他のメンバーは退院後の行き先によって以下のように異なります。

方針
(行き先)
メンバー(例
在宅復帰・ケアマネジャー
・訪問看護師
・福祉用具業者
施設・ケアマネジャー
・施設の相談員
・施設看護師
転院・転院先の医師
・転院先の看護師
・転院先のMSW

関係する機関が集まり、目標に向けたそれぞれの役割を確認し、日程調整や受け入れるときの段取りなどをすり合わせていきます。

カンファレンスでのMSWは、他職種の視点を尊重しつつも、患者さんの「生活」に焦点を当てた主張をすることが重要です。

退院・フォローアップ

MSWの退院支援は、退院させて終わりではありません。
退院時や退院後のフォローも行っていく必要があります

退院時には、サービス利用手続きの最終確認や関係機関への退院報告などを行い、退院後の生活がスムーズに始まるようにします。

退院後はサービス提供状況を確認し、問題があれば軌道修正も必要です。

支援業務
退院時・サービス利用手続きの最終確認
・関係機関への退院報告
など
退院後・サービス提供状況の確認
・必要に応じて修正
など
MSWのフォロー内容例(退院時・退院後)

入退院支援加算とは?

入退院支援加算とは、退院困難な事例に対し、入院早期から介入し退院支援計画の作成や転院調整、カンファレンスといった退院支援を行っている場合に算定できる加算です

退院支援業務では「入退院支援加算」の算定ができるよう、入院早期から動くことが求められます。
算定要件を満たすには、原則、入院後3日もしくは7日以内にアクションを起こす必要があり、スピード感をもって動くことが重要となってきます。

※算定要件については、地方厚生(支)局や最新の診療報酬改定資料を確認してください。

調整をスムーズにする「多職種連携」のポイント

退院支援をする上で必須になるのが多職種連携ですが、専門領域や立場の違いがある多職種と連携するのは想像以上に大変で頭を抱えるMSWも多いでしょう。

ここからは、職種別の連携のポイントを紹介します。

医師との連携

医師との連携では以下のポイントを意識しましょう。

  • 医学的な見解を尊重しつつ生活面での話をする
  • 根拠に基づいて端的に話す
  • 入院早期から動き出す

医師は、患者さんを医学的な観点で判断するため、ある程度回復して入院の必要がなくなれば退院可能の許可を出します。

しかし、実際は退院後に患者さんを受け入れる環境が整っていなければ、退院は難しく、MSWはそういった生活背景の部分を理解してもらう必要があるのです。

その際、医師が間違っているという表現は避け、医学的な見解も尊重することが重要です。
医学的には退院可能であるが、家庭や経済的に問題を抱えていると退院後の生活が回らないことを理解してもらいましょう。

また、医師は何人もの患者を抱えています。
経緯を長々と説明するのではなく、なぜ退院困難であるのか、端的に説明する技術が必要となります。
他にも当初の予定よりも早めに退院許可が出ることもあるため、入院早期から動き出すこともポイントです。

MSW退院支援業務-他職種との連携

ケアマネジャーとの連携

ケアマネジャーは、患者さんの介護保険サービス計画(ケアプラン)を立てる役割を担っています。

ケアマネジャーとの連携のポイントは以下のとおりです。

  • 介護保険サービスの利用が決まった段階での情報提供
  • ADLや生活背景など患者の状況を具体的に伝える
  • 役割の違いを理解する

ケアマネジャーとの連携の鍵となるのは、情報提供(サマリー送付)のタイミングと丁寧さです
ケアプランを立てるには、アセスメントや事業所との調整などが必要となり、時間を要します。介護保険サービスを利用する方向性が決まった段階で、情報提供を行うことでケアマネジャーも早めに動き出すことができます

また、情報提供は具体的にすることもポイントです。
例えば、以下のように、具体的に必要な介助が分かるように伝えます。

「日常生活は一部介助が必要」

「歩行は自立しているが、トイレは付き添いが必要」

退院に向けた計画を立てるMSWと、ケアプランを立てるケアマネジャーの役割の違いを理解することも重要です。

介護保険サービスのことは全て丸投げ、またはMSW側の都合で全て決めてしまうような関係性では連携はうまくいきません。
互いの役割を理解し尊重することで、ケアマネジャーとの信頼関係を築くようにしてください。

ケアマネジャーの役割について詳しく知りたい方は、ケアマネジャーと社会福祉士(相談員)の仕事内容の違いの記事もご覧ください。

「家に帰れない?」困難事例への対応ポイント

MSWが直面する、よくある困難事例と対応ポイントを紹介します。

事例1:独居・身寄りがいない

退院後のケアや手続きをする家族や親戚がいないケースでは、以下のような課題と対応策があります。

課題(例対応策(例
判断能力が不十分で財産管理が困難成年後見制度の利用検討
在宅復帰後の見守り体制が不十分地域包括支援センターとの連携
保証人不在のため退院や施設利用が困難身元保証サービスの活用

身寄りがいないケースでは、制度やサービスを活用して地域社会全体で患者さんの生活を支える支援が必要です。

特に「地域包括支援センター」は、地域の高齢者福祉の総合窓口のような役割を果たしています
在宅の独居高齢者の見守りの起点になる他、成年後見制度の窓口にもなっています。

地域連携で重要な役割を担う地域包括支援センターについては、地域包括支援センターでの社会福祉士の役割についての記事で詳しく解説しています。

事例2:経済的困窮(低所得・無保険)

低所得や無保険といった経済的困窮のケースでは、まずは収入や保険の加入状況などを正しく把握した上で、利用できる制度を確認しましょう。

経済的困窮のケースでは、以下のような制度の利用が考えられます。

制度窓口
無料低額診療事業
(生協診療所など実施機関で利用可能)
実施医療機関の地域医療連携室
高額療養費制度加入する健康保険によって異なる
国民健康保険
(市区町村役場の国民年金課)
健康保険
(加入する健康保険組合または協会けんぽの都道県支部)
生活保護福祉事務所の生活保護担当

入院時の医療費の問題だけではなく、退院後の生活にかかる費用まで考え、上記の相談窓口に相談しながら早めに動くことが重要です

事例3:患者と家族の意向不一致

患者さんとご家族の意向不一致でよくあるのが、住み慣れた家に帰りたい患者さんと、介護の負担から施設利用を希望するご家族の対立です。

板挟みとなり悩むMSWは多いですが、基本的にMSWは「代弁者」として、患者さん本人の意思を尊重する立場にあります。
その上で、訪問看護やデイサービスの利用など、ご家族のレスパイト(休息)も考慮した妥協点を探ることが重要です。

ご家族の声にも理解を示しながら、納得してもらえるよう丁寧に説明していきましょう。

MSW退院支援業務-事例

退院支援業務で悩んだらどうすればいい?

多くのMSWは、病院から早く退院させるようプレッシャーをかけられたり、クレーム対応に追われたりと、日々ストレスを抱えながら退院支援業務を行っています。
多職種連携がうまくいかずモヤモヤする、患者さんと病院の板挟みが苦しい、そんな思いから「もうMSWを辞めてしまおうか」と考える方も多いのではないでしょうか。

しかし、一口に退院支援といっても、以下のように病院の機能によって、スピード感や関わり方は大きく異なります。

病院の機能特徴・働き方の違い
急性期早期の対応が重要。次々と調整が必要となる。
回復期・療養じっくり患者さんと向き合い、在宅復帰を支援できる。

スピード感をもって業務に取り組みたい人は急性期、じっくりと支援を進めていきたい人は回復期・療養、と自分の意向にあった職場を見つけることも大切です。

MSWが辛いと感じている方は一度、自分のやりたい退院支援と向き合い、転職なども視野に入れてみてはいかがでしょうか。

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相談業務のストレスについては、社会福祉士を辞めたいと感じたら?の記事で詳しく解説しているので、こちらもご覧ください。
転職活動の参考に、MSWの給料事情を詳しく知りたい方はMSWの年収の記事もご覧ください。

まとめ

MSWの退院支援は、患者さんを退院させるための事務的な手続きだけではなく、患者さんが住み慣れた地域で生活を続けるための「架け橋」となるやりがいに溢れた業務です。
立場や専門領域の異なる多職種と連携することは簡単ではありませんが、知識と経験を積むことで必ず調整力は磨かれます。

MSWとして長く働くための秘訣は、自分にあった職場を選ぶことです。
退院支援業務が辛いと感じている場合は、職場が自分に合っていない可能性があるため、転職することも考えてみましょう。

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