生活相談員は、利用者様やご家族の相談に応じ、施設や地域とをつなぐ「窓口」となる専門職です。
社会福祉士の資格を活かして相談員になりたいと考えている方のなかには、仕事内容や介護職との「大変さ」の違いがわからず、一歩踏み出せない方もいるでしょう。

本記事では、生活相談員の具体的な業務、必要な資格、キャリアパスなど、転職前に知りたい情報を解説します。

生活相談員とは？

生活相談員は、介護施設などにおいて、利用者様やご家族からの相談に応じ、適切なサービスが利用できるよう関係各所とをつなぐ「窓口」であり「橋渡し役」となる専門職です。
施設と利用者様、そして地域をつなぐ重要な役割を担います。

生活相談員の基本的な役割と立ち位置

生活相談員の基本的な役割は、以下のとおりです。
現場の介護とは異なる立場で、利用者様の生活全体を支えています。

生活相談員の勤務先・職場

生活相談員の主な勤務先は、高齢者介護施設全般です。
このように、相談員の活躍の場は多岐にわたります。

介護職やケアマネジャーとの違い

介護職が身体介護のような直接的な介護を担うのに対し、生活相談員は「相談・調整・手続き」が中心です。

また、ケアマネジャーは主にケアプランの作成を行い、生活相談員は、利用者様のニーズをケアマネジャーに伝えたり、プランどおりにサービスが提供されるよう調整したりする役割を担います。

生活相談員の主な仕事内容

生活相談員の仕事は、利用者様と施設・地域をつなぐための業務であり、その仕事範囲は多岐にわたります。

ここでは、生活相談員の4つの主な仕事内容について解説します。

相談援助業務

利用者様やご家族が抱える生活上の不安や介護に関する悩み、施設への要望などをヒアリングします。

単に聞くだけでなく、傾聴と共感をもってニーズを的確に把握し、課題解決に向けて専門的な助言を行う役割です。利用者様の思いを代弁する重要な立場でもあります。

連携・調整業務

利用者様に適切なサービスを提供するため、施設内外の関係各所とをつなぐための「調整役」です。

施設内のスタッフや看護師との情報共有はもちろん、外部のケアマネジャーや医療機関、行政とも連携します。
サービス担当者会議に出席し、チームの一員として他職種と意見を交換することも重要な業務です。

契約・事務業務

見学希望者への案内や説明、入退所時の利用契約手続きなどを行います。

また、デイサービスでは、利用者様の状況に合わせた「通所介護計画書」の作成も担当します。その他、介護報酬請求に関わる事務作業や実施記録なども行います。

介護業務の兼務

デイサービスや小規模な施設では、介護職員との兼務も珍しくありません。

入所施設であっても、利用者様の送迎や受診の付き添い、食事介助のフォローなど、介護技術を活用する場面もあります。

生活相談員として働くために必要な資格

生活相談員は特定の資格の名称ではなく職種名です。
生活相談員として働くには、一般的に「社会福祉士」「精神保健福祉士」「社会福祉主事任用資格」の3つが知られていますが、自治体によっては介護福祉士やケアマネジャーなども認められています。

社会福祉士

福祉全般に関する高度な専門知識と技術を持つ専門資格であり、利用者様やご家族の相談援助、関係機関との調整役として高い専門性が求められます。
資格手当の対象となりやすく、キャリアアップにも有利に働くことが多い資格です。

精神保健福祉士

精神障がい分野に特化した国家資格です。社会福祉士と同様に、生活相談員の資格要件として認められています。
高齢者介護施設においても、認知症の方や精神疾患を抱える利用者様への対応、ご家族の心理的ケアなどでその専門性が活かされます。

社会福祉主事任用資格

主に公務員が社会福祉の業務を行うために必要な「任用資格」ですが、多くの民間施設でも生活相談員の要件として認められています。
大学などで指定科目を履修していれば卒業と同時に取得できている場合もあります。

自治体によって認められる資格

介護福祉士やケアマネジャーの資格や実務経験でも、生活相談員の要件として認めている自治体が多くあります。

これは介護現場の深い知識と経験が、相談・調整業務に不可欠と判断されているためです。
ご自身の介護福祉士としての経験が活かせる可能性が高いため、必ず勤務希望地の自治体要件を確認しましょう。

勤務先別（施設形態別）の仕事内容の違い

生活相談員の仕事内容は、勤務する施設形態によって求められる役割が異なります。

ここでは、特別養護老人ホーム（特養）、デイサービス、介護老人保健施設（老健）を例に、具体的な業務の違いを解説します。

特別養護老人ホーム（特養）の場合

「終の棲家」とも呼ばれ、長期入所が前提の施設です。主な業務は、入所希望者やご家族からの相談対応、契約手続きです。

また、入所判定会議への参加や空きベッドの調整、施設内スタッフとの多職種連携も重要な役割です。

デイサービスの場合

自宅から日帰りで通う施設です。主な業務は、新規の利用者様やご家族への見学対応、利用開始・終了の契約手続き、通所介護計画書の作成です。

また、施設の稼働率を管理するため、ケアマネジャーへの営業を行うこともあります。

介護老人保健施設（老健）の場合

介護老人保健施設（老健）は「在宅復帰」を目的とした中間施設です。「支援相談員」と呼ばれ、3ヵ月程度の短期間での入退所が中心となります。

病院からの受け入れ調整や、退所後にご自宅で生活できるよう、リハビリ職やケアマネと連携する「在宅復帰支援」が特徴的な業務です。

生活相談員の1日のスケジュール例（デイサービスの例）

ここでは、生活相談員の1日のスケジュール例を紹介します。
デイサービスの場合、日勤が基本となり、生活リズムを整えやすいのが特徴です。

午前：朝礼、利用者様の受け入れ・バイタルチェック補助、相談対応

出勤後、朝礼でスタッフと情報を共有し、利用者様を笑顔で迎えます。

事業所によっては介護職の兼務として送迎やバイタルチェックの補助に入ることもあるでしょう。合間を見て、ご家族からの電話相談や、新規利用希望者様への見学対応を行います。

午後：個別機能訓練の補助、ケアマネ訪問、サービス担当者会議、記録作成

午後は調整・事務業務が中心です。
ケアマネジャーの訪問対応やサービス担当者会議への出席などを行います。
利用者様の「通所介護計画書」の作成・更新や記録業務も進めます。

夕方：利用者様の見送り、ミーティング、事務作業

再び送迎車に同乗したり、利用者様のお見送りをしたりします。

夕方のミーティングで情報共有をしたあと、日中の相談記録の整理や介護報酬請求に関する事務作業などを行います。

翌日の準備をしたら業務終了です。

生活相談員の「やりがい」と「大変さ（きつさ）」

生活相談員の仕事は、肉体的な負担が中心の介護職とは異なる「やりがい」と「大変さ」があります。
転職前にギャップを感じないよう、両面を具体的に見ていきましょう。

やりがい：利用者様やご家族から直接「ありがとう」と言われる

利用者様やご家族と深く関わり、悩みや不安を直接お聞きする立場だからこそ、問題が解決したときに「あなたに相談してよかった」「ありがとう」と直接感謝の言葉をいただけます。

サービスの利用前や終了後については、相談員しか関わらないこともあるため、介護職とは違った形で得られる大きなやりがいです。

やりがい：社会福祉士などの専門性を活かせる

社会福祉士や精神保健福祉士、介護福祉士として培った専門知識や技術を、相談援助や多職種連携のなかで活かせます。

制度や地域の社会資源を活用して利用者様の生活を支える「ソーシャルワーク」を実践できることは、専門職としての喜びにつながります。

大変さ：多方面との板挟みになりやすい

生活相談員は「調整役」です。利用者様やご家族の要望、現場スタッフの状況、ケアマネジャーの方針、施設の経営的な視点など、異なる立場の意見の間に立つことになります。

全ての要望に応えられないことも多く、「板挟み」の状況にストレスを感じることもあります。

大変さ：業務範囲が広く、残業が発生しやすい場合も

相談業務、連携・調整、契約・事務、さらに施設によっては介護業務の兼務と、業務範囲が非常に広いのが特徴です。

日中は利用者様対応や会議に追われ、事務作業が夕方以降に集中することもあるでしょう。
業務過多から残業が発生しやすい側面もあります。

生活相談員の給料・年収はどれくらい？

給与水準は転職を考えるうえで、重要な関心事です。社会福祉士の資格が給料にどう影響するのか気になる方も多いでしょう。

ここでは、具体的な給与相場とキャリアパスを解説します。

平均給与と年収の相場

厚生労働省の調査（令和6年度）によると、常勤の介護職員の平均給与額が338,200円であるのに対し、生活相談員は353,950円でした。

月額で約1.5万円高い水準です。体力的な負担が比較的少ない日勤中心の業務でこの水準を目指せるのは、介護職からのキャリアチェンジとして魅力的な点です。
年収相場としては、おおむね350万円～400万円程度がひとつの目安となります。

出典：令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果（厚生労働省）

資格手当（社会福祉士など）による給与の違い

給与水準は保有資格によっても変動します。
特に国家資格である「社会福祉士」や「精神保健福祉士」は専門性が高く評価され、基本給や資格手当の面で優遇される傾向が強いです。

一方、自治体要件で「介護福祉士」として生活相談員になる場合、資格手当の額は社会福祉士より低くなる可能性もありますが、介護現場の経験が評価され、給与に反映される場合もあります。

給与アップのためのキャリアパス

生活相談員は、その先のキャリアを見据えやすい職種です。

相談員として実務経験を積むことで、このようなキャリアパスが考えられます。
ただし、ケアマネジャーを目指す場合、社会福祉士の資格手当が外れるなど、施設によって給与体系が変わる可能性があることには注意が必要です。

施設長などの管理者や、障がい福祉分野のサービス管理責任者など、経験の活かし方はさまざまです。

社会福祉士のキャリアパスについては、以下の記事も参照してください。
>>社会福祉士はどのようにキャリアアップしていけばいい？

まとめ

生活相談員は、介護職の経験を活かし「相談・調整」を担う専門職です。
社会福祉士や介護福祉士など必要な資格は自治体で異なります。

肉体的な負担は減る一方、「板挟み」などの精神的な大変さもありますが、ケアマネジャーや管理者へのキャリアパスも描ける魅力的な仕事です。

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