ケアマネジャーの資格取得に必要な「実務研修」には、居宅介護支援事業所などで行う実習が含まれています。
実習と聞くと「どの事業所を選べばいいの?」「電話やメールはどうすればいい?」と色々な疑問や不安があると思います。
この記事では、実習先の探し方・申し込み手順・電話やメールの例文・事前準備リストまでをまとめて解説します。
目次
ケアマネの実務研修における「実習」とは?
ケアマネ実習の目的
実習の目的は「ケアプラン作成の一連の流れ」を学び、自分がケアマネの仕事に合っているかどうか見極めることです。
ケアマネジャーの仕事は、単に書類を作成することだけではありません。
実際に利用者様の家に足を運び、ニーズを見極め、社会資源を活用し、ケアプランを作る役割を担います。
そのため実習では、講義やグループワークなどの研修だけでは学びきれない「現場感覚」を体験します。
利用者様の家への訪問やサービス担当者会議の流れを実際に見て、「ケアマネ業務がどのように進んでいくのか」を理解することが大切です。
そして、先輩ケアマネの働きを見ながら、自分がケアマネとして働いている姿を想像することも重要です。

実際に、理想としているケアマネの働きと現実とのギャップに悩むということをよく聞きます。一生懸命勉強し、憧れのケアマネになったものの、仕事の多忙さや幅広い業務に対応しきれず、元の職種に戻ったという方も少なくありません。
実習期間と主な内容(アセスメント、モニタリング同行など)
実習期間は一般的に3日間程度ですが、内容は居宅事業所によって異なりますが、主に以下のような流れになります。
- アセスメント
- サービス担当者会議
- ケアプラン作成
- モニタリング訪問
- 給付管理
ケアマネの仕事の一連の流れとなりますが、細かくあげると、地域ケア会議の出席や地域の社会資源の開発、他事業所や行政との連携など幅広い対応が求められています。
実習では、実際に先輩職員に同行しながら、一つ一つ内容や状況を確認していくと良いでしょう。
利用者宅を訪問し、生活状況や環境、ご家族の思いや利用者様の希望を聞き取り、ニーズを見極めます。
アセスメントを通じて、サービス提供へと繋げます。アセスメントは初回で「信頼」を得られるかどうかの重要な場面です。
先輩がどのように対応しているのか、聞き取りだけでなく、相槌や頷きなど細かい箇所までしっかり見ましょう!
多職種が集まりケアプランを検討する会議を見学します。
利用者様を中心に、ご家族や、利用しているサービス事業者が集まります。
サービス担当者会議で司会・進行をするのがケアマネです。
利用者様やご家族の思い、事業所の報告と意見を聞きながらスムーズな進行が求められます。
医療などの専門的な知識も必要となることもあります。
ケアマネがどのような準備をし、サービス担当者会議に臨んでいるのかを確認しましょう。
担当者の指導のもと、実際の利用者様に対して、ケアプランを作成していきます。
ニーズ、目標、サービス内容、サービスの担当者、頻度や限度額などを意識しながら組み入れていきます。ケアプラン作成の際に重要となるのが「地域にある社会資源」です。
社会資源を知らないと、必要なサービスの提供の幅が狭まってしまうので、事前に社会資源を確認しておくことをおすすめします。
プラン通りにサービスが提供されているかを確認するために同行します。
利用者様の表情や顔色、プランが順調に進んでいるかの確認はもちろんのこと、ご家族の様子や事業所のサービス内容(連絡帳などを通じて)も確認します。
モニタリングでケアプランの再構築が必要な場合は、再度検討したり、サービス担当者会議を開きます。
現在はシステムを使用している事業所がほとんどですが、ケアマネが作成し「ケアプラン」に基づいて、実際に利用者様がどんなサービスを、何回、どれだけ使ったのかを点数(単位)で集計し、市区町村に報告し、保険給付が行われるように管理することです。
これが、正確に行われないと、利用者様に過剰な自己負担が発生したり、サービス事業所が報酬が受け取れなかったり、受け取りが大幅に遅れることとなり、迷惑がかかってしまいます。
実習中には、上記の点を意識すると良いでしょう。
ケアマネ実習先はどうやって探す?
研修実施団体から紹介・斡旋される場合
都道府県や指定研修団体によっては、実習先の事業所を斡旋してもらえる場合があります。
その場合は自分で探す必要はなく、手間が省けます。
しかし、自治体や地域によって対応が異なります。多くの地域は、「実習受け入れ先一覧」という情報を提供するだけで、一覧から自分で選択し、連絡する形式となります。
自分で探す必要がある場合
「実習受け入れ先一覧」という情報を提供された際に、一覧の中から自分で探し、居宅介護支援事業所に直接連絡し、受け入れ可能かを確認します。
実習生が何人も受け入れをお願いしている場合、事業所が対応できないということでお断りされる場合もあります。
実習先の募集が始まったら、出来るだけ早くに連絡し、受け入れをお願いしましょう。
また、地域によっては一覧も無く、受講者が自分で実習先を探さなければならない場合があります。
その際は、居宅介護支援事業所を中心に候補をいくつか探し、電話で実習受け入れの可否を確認します。
自分で探す場合、どんな事業所を選べばいい?
以下の4つのポイントで探すのがおすすめです。
- 居宅介護支援事業所
- 実習受け入れの実績の有無
- 通いやすさや現職と両立できそうな場所
- 資格取得後も良い関係が築けそうな事業所
ポイント1.居宅介護支援事業所であること
ケアプラン作成業務や一連の流れを学ぶ際には、居宅が良いでしょう。
施設ケアマネのみの事業所では、施設内で完結してしまうようなケアプランも多いため(地域との繋がりやサービス利用も施設内のみ)実際の学びとしては不十分となってしまうことがあります。
ポイント2.実習受け入れの実績があるか
過去に実習生を受け入れている事業所では、指導体制がしっかりと整っているため、安心して学べます。
ポイント3.通いやすさや、今の職場勤務と両立できそうな場所か
実習は数日間にわたり行われるため、自宅や職場から近く無理なく通える場所を選ぶのが良いでしょう。
実習が早く終われば、そのまま勤務ということも十分に考えられるので、事前に実習中の勤務をどうするかなど、職場と相談しておきましょう。
ポイント4.資格取得後も良い関係が築けそうな事業所か
今後、資格取得後、転職する際に、実習先が良い場所であるとそのまま実習先に転職をする方も多いと聞きます。
良い先輩ケアマネがいることや協力体制や相談体制がしっかりしている事業所では安心して働いていけます。
今後も、「繋がっていきたいな」と思えるような事業所を探すのが良いでしょう。
そのためには、実際に実習に行った方や現在ケアマネで働いている方にどの事業所が良いかなどを相談すると良いでしょう。
いつから動くべき?ケアマネ実習申し込みの手順
ここからは申込み手順について解説していきます。
実習先のリストアップと選定
原則として、前期研修修了日の翌日から後期研修開始前日までが実習可能期間となります。
実習開始の数か月前からリストアップを始めましょう。インターネットでの検索や地域包括支援センターからの情報収集も大切です。
候補を複数挙げ、優先順位をつけて、すぐに連絡できるようにしましょう。
早々にスケジュール確認と準備を始めることで、余裕を持って実習に臨むことができます。
地域によって、異なる場合がありますので、対象都道府県の研修スケジュールを必ず確認しましょう。
アポイントの連絡
候補が決まったら、ケアマネ実習のアポイント連絡をします。
まず実習先や協力者に対し、電話やメールで依頼・日程調整を行いますが、電話での問い合わせが基本です。
事業所の業務が落ち着く時間帯(午前10時〜11時、午後2時〜4時頃)を狙うとつながりやすいです。
実習生自身が直接連絡する必要があり、特に電話の場合は事前に名乗り、目的を簡潔に述べ、先方の都合に配慮するとともに、希望日程は柔軟に調整できるように複数案を準備しておくとスムーズです。
忙しい中、実習生の対応をしてくださっているという気持ちを忘れずに、感謝と失礼のないよう丁寧な言葉遣いを心がけることが大切です。
事前訪問と依頼状の提出
受け入れが決まったら、依頼状を持参または郵送しますが、可能な限り事前訪問を行いましょう。
事前訪問は、実習先の事業所や指導者と顔合わせを行い、実習内容やルール、スケジュールの確認をする重要なステップです。
ここで利用者情報の共有や実習指導計画の打ち合わせを行うこともあります。
また、実習生は、実習時の守秘義務や接し方、訪問時の留意点などを確認し、不安や疑問点を解消します。
そのためには、事前訪問を行い、スケジュールを調整して臨みましょう。

受け入れが決まったら、正式な「実習受入依頼書」を事業所に提出します。
依頼状には、以下の内容があります。
相手先から「実習受入承諾書」が返送されることで、正式な受け入れ契約が成立します。
- 実習生の氏名、住所、連絡先
- 実習の期間、日時
- 実習の目的(ケアマネジメントプロセスの理解と体験など)
- 実習期間中の守秘義務や個人情報保護に関する誓約
出典:介護支援専門員養成研修における実習受入に関する指針(厚生労働省)
【例文付】実習依頼のアポイント|電話・メールのポイント
連絡する前に押さえるべき心構えとビジネスマナー
居宅介護支援事業所のケアマネジャーは日々の業務で忙しくされています。
その中で、実習を受け入れていただくということを念頭におき、以下の点を意識してアポイントを取りましょう。
- 挨拶と名前、要件はケアマネ実習の受入れ依頼であることをはっきりと伝える。
- 断られても落ち込まず、次の候補先へ気持ちを切り替えて電話しましょう。
電話での伝え方(例文)
ケアマネは、利用者様宅へ訪問するため、不在にしていることが多々あります。
事業所によっては、実習担当者より外出先から折り返しになったり、担当者が事業所に戻ってきてからの折り返しになる場合もあります。
折り返しになることも念頭に電話するようにしましょう。
以下冒頭の例となります。
お忙しいところ恐れ入ります。
介護支援専門員実務研修の実習でお世話になります、〇〇(フルネーム)と申します。
実習の受け入れについてご相談したく、お電話しました。実習指導者の方はいらっしゃいますか?」
指導者と話すことが出来たら、「〇月〇日から〇日までの予定で実習を希望していますが、受け入れの可否やご都合をお伺いしたいです」と伝えて日程を調整します。
依頼メールの書き方(例文)
どうしても電話が繋がらない場合やなかなか担当者と電話で話しができない場合、事業所のホームページなどで、メールアドレスが掲載されていたり問い合わせがメールで出来る場合等は、メールで依頼する方法もあります。
メール例文
件名:ケアマネ実務研修実習のお願い(氏名)
本文:
◯◯居宅介護支援事業所 ご担当者様
突然のご連絡失礼いたします。私、◯◯県ケアマネ実務研修を受講しております◯◯と申します。
このたび実習受け入れ先を探しており、貴事業所にお願いできないかと思い、ご連絡差し上げました。
ご検討いただけますと幸いです。
お忙しい所恐れ入りますが、よろしくお願いいたします。
もし実習の受け入れを断られたら?
ケアマネ実習は、受け入れを断られることも珍しくありません。
他の実習生の申込みが続いていたり、事業所の人員体制が理由で受入れ対応ができない場合もあったりと、「自分だから受け入れてもらえなかった」というわけではないので、あまり落ち込まず、気持ちを切り替え、次の候補先に連絡するようにしましょう。
断られた際は、ご検討いただいたことにお礼を伝えることを忘れないようにしましょう。
ケアマネ実習の事前準備リスト
ケアマネ実習へ行く際は、事前に服装や持ち物、時間の確認をしておきましょう。
特に、服装は、スーツかオフィスカジュアルか、またはポロシャツにチノパンのような、動きやすい服装がよいかは、事業所によって異なるため確認しておくとよいでしょう。
ケアマネ実習の服装については、別記事で詳しく解説します。
先輩ケアマネが教える「必須アイテム、あると便利な物」
実習先から言われなくても、筆記用具、ノートやメモ帳、研修資料、飲み物はもっていくようにしましょう。
また、実習先は利用者様宅へ訪問するため、スリッパや折りたたみ傘があると役に立つことがあります。
利用者様宅へ訪問する際、手ぶらでいくわけには行かないため、訪問用の鞄を持参するか、実習時にもっていく鞄を利用者様が不快に思わないシンプルなものにしておくとよいでしょう。
また、メモをする際に、クリップボードがあると便利です。

- 筆記用具、ノート(メモ帳)
- 研修資料
- 飲料水
- スリッパ
- 折りたたみ傘
- クリップボード など
実習前に何を勉強・復習しておくべき?
より実りのある実習にするために、事前にケアマネ業務について勉強、復習しておくとよいでしょう。
- 介護保険制度の基本
- ケアプラン作成の流れ など
ケアマネは、当たり前ですが介護保険制度に基づいてサービスを行っています。
細かいところまで勉強すると膨大な量になるので、介護保険制度のおおまかな部分は最低限理解しておきましょう。
- 要介護要支援認定を受けるまでの流れ
- 利用できるサービスの種類
- ケアマネの役割 など
- ケアプランを作成するまでの流れ
- 目標の立て方
- ケアプランの役割
- アセスメントやモニタリング時に押さえるポイント など
実務研修で学んだことを復習してから、実習にいくようにすると実際に働く際に役に立ちます。
また、実務研修で分からなかったことを質問できるよい機会なので、研修で分からなかったこと等を質問できるようにメモしておくとよいでしょう。
ケアマネ実習の申し込みでよくある質問FAQ
まとめ
ケアマネ実習は、資格取得のためだけでなく、将来ケアマネとして働く自分をイメージできる大切な機会です。
ケアマネ実習は、学ぶだけでなく、事務所の雰囲気を肌で感じたり、実際にケアマネとして働いている方の話を聞くことができるとても良い機会です。
実習先の選び方や申し込みのマナーを押さえ、安心して臨めるよう準備しておきましょう。
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