「小規模多機能」「小多機」という名前を聞いたことがあってもどのようなサービスかよく分からない!という方もいらっしゃるかと思います。
正式名称「小規模多機能型居宅介護(略称:小規模多機能)」は、利用者が住み慣れた地域・自宅での生活を続けられるよう、「通い」「泊まり」「訪問」を一体的に提供する介護サービスです。
この記事では、小規模多機能で働くケアマネジャー(計画作成担当者)や介護職員の仕事内容、やりがい・大変さ、居宅ケアマネとの違いまでをわかりやすく解説します。
目次
小規模多機能とは? まずは基本をおさらい【スタッフ向け】
「通い」「泊まり」「訪問」を一体的に提供する地域密着型サービス
小規模多機能は、1つの事業所で「通い」「泊まり」「訪問」の3つのサービスを組み合わせて提供する地域密着型サービスです。
1つの事業所からサービスを受けることになるので、通う所で会う職員、泊まる所で会う職員、家に来てくれる職員が同じ事業所の職員になるため、顔なじみの職員からサービスを受けることができるのが特徴です。
また、1つの事業所で対応するため、急遽泊まりが必要になった、急遽訪問してほしい、となった際にも柔軟に対応することができる在宅サービスです。

従来の居宅サービス(訪問・通所が別々)との違い
通常の居宅サービスでは、居宅介護支援事業所のケアマネがケアプランを立て、別事業所のデイサービスや訪問介護等を利用するため、それぞれ別々の事業所を利用することになります。
一方、小規模多機能では、1つの事業所内で、ケアマネ、通い、泊まり、訪問のサービスを受けることになり、同じスタッフが一貫してサポートするため、利用者様にとって安心感が高く、連携もスムーズです。
また、料金に関して、小規模多機能は、月定額制(宿泊費、食費は利用に応じて全額自己負担)となっており、分かりやすいです。
「看護小規模多機能(看多機)」との違い
看護小規模多機能(看多機)は、介護保険と医療保険の両制度のもとで運営され、医療的ケアが必要な利用者様にも対応できるサービスです。
看護小規模多機能では、小規模多機能の通い、泊まり、訪問のサービスに加え、「訪問看護」も一体的に行われる点が大きな違いです。
看護職員が手厚く配置されているため、医療ニーズの高い方は、看護小規模多機能を利用されるのも一つの選択肢となります。
【職種別】小規模多機能の具体的な仕事内容と役割
ケアマネジャーの仕事内容(ケアプラン作成・介護業務兼務)
小規模多機能では、ケアマネが「計画作成担当者」として勤務します。
利用者様の状況を把握し、サービスの計画(ケアプラン)を作成すると同時に、介護現場の業務も兼務することがあります。
また、相談員としての役割も多く、ご家族との連絡調整や主治医との連携等、仕事内容は多岐にわたります。
居宅介護支援事業所のケアマネと違い、実際に利用者様を介護したり、通いで利用者様に会うことも多く、利用者様と密に関わりながらケアプランを作成することができます。

介護職員の仕事内容(通い・泊まり・訪問すべての対応)
介護職員は、デイサービスでの食事や入浴、排泄介助やレクリエーション、夜勤での見守り、訪問介護での支援など、あらゆる形態で利用者様の介護を行います。
利用者様の自宅での様子や外で他人と過ごすときの様子を見られたりと、ご利用者様にとってよい支援方法を多方面から考えることができます。
看護職員の仕事内容(医療的ケアと健康管理)
看護職員は、バイタルチェックや服薬管理、医師との連携、医療的ケアを担います。
利用者様の体調変化をいち早く察知し、介護職員やケアマネと連携しながら対応していきます。
小規模多機能で働くメリット・やりがい
メリット①:利用者様一人ひとりと密接に関われる
登録定員が1事業所29人までと決まっていること、通い、泊まり、訪問サービスをすべて担うため、利用者様と長期間関わることになるため、一人ひとりと深く関われ、信頼関係を築くことができます。

メリット②:「通い・泊まり・訪問」の多様な介護スキルが身につく
デイサービス職員の業務、ショートステイ職員の業務、訪問介護職員の業務をすべて担うため、他の職場では経験できない幅広い介護スキルを習得することができます。
スキル以外にもそれぞれの業務でのやりがい、大変さ等を学ぶ機会にもなります。
メリット③:多職種連携がスムーズ
通常の居宅サービスを受けているケースでは、多職種と連携を図る際、A訪問介護事業所への連絡、B訪問看護事業所への連絡、主治医への報告…等多職種と連携するとなると、それぞれの事業所へ電話やFAX等をすることになり、どうしても時間がかかってしまいます。
その点、小規模多機能は、同じ事業所内にケアマネ、看護師、介護職員がいるため、連携・情報共有をスムーズに取ることができます。
小規模多機能で働くデメリット・大変さ
大変さ①:業務範囲が広く「マルチタスク」になりがち
小規模多機能型居宅介護では「通い」「訪問」「泊まり」のサービスをすべて担う必要があり、利用者様のニーズに応じて状況が頻繁に変化します。
そのため、どのサービスでも対応できるように、デイサービス、訪問介護、ショートステイなどの知識が必要で、覚えるべき業務量が非常に多くなります。
色々な業務を利用者様やご家族の要望や状態に応じて対応するため、臨機応変な対応力が求められるほか、送迎なども現場職員で担っている事業所もあります。
大変さ②:24時間365日のサービス提供体制(夜勤・緊急対応)
小規模多機能型居宅介護では、24時間365日対応のため、夜間や急な呼び出しが求められることも多いです。
そのため、シフトの変更やスケジュール調整を緊急で行う必要があり、職員の負担が大きいと聞きます。
また、利用者様の人数が日々変わることによって、業務の幅や業務量に変化が見られたり、泊まりの利用者様の状態を把握する業務に時間がかかる場合もあります。
大変さ③:利用者との距離が近く、精神的な負担を感じることも
小規模多機能型居宅介護は、利用できる利用者様の人数が決まっているため、1人1人と向き合う時間が取れて、信頼関係が築きやすいのが特徴です。
しかし、利用者様との距離が近いことで、業務外の買い物を頼まれたり、家族の分の洗濯などを頼まれたりすることがあります。
また、利用者様の状態の悪化や家族との関係に共感しすぎてしまい、プライベートと仕事の境界が曖昧になり、精神的に負担を感じることも多いと聞きます。
【ケアマネ必見】「居宅ケアマネ」と「小規模多機能ケアマネ」の違い
違い①:ケアプランの作成(担当件数とサービス内容)
居宅ケアマネでは、逓減制(報酬減算)が適用されない上限が原則44件となっています。
しかし、実際は地域にもよりますが、新規の利用者様を担当しても、利用者様の入れ替わりがあり(入院・入居等)、実際の件数は35〜40件が一般的なようです。
一方、小規模多機能のケアマネは、登録定員が最大29名ほどのため、担当も20〜25名程度と比較的少人数となります。
サービス内容は居宅ケアマネの場合、多くの利用者様の対応や訪問、サービス担当者会議、地域ケア会議、行政や事業所との連絡調整など幅広い業務量や連携が必要となり、問題解決に向けて行動する力が求められます。
また、医療知識や多制度の知識を身につけていくことも重要となります。
小規模多機能のケアマネは、利用者様の通い・訪問・泊まりを一体的に支援するサービス形態なので、1人の生活全体をトータルで見守ることができます。
きめ細やかなサービスの提供が可能になる一方、在宅サービス全般の知識と、現場での日々の情報収集が欠かさず必要となります。
| 項目 | 居宅ケアマネ | 小規模多機能ケアマネ |
|---|---|---|
| 担当件数 | 約35件~40件と件数が多く、訪問・担当者会議、初回アセスメント、給付管理、認定調査、記録などが必要 | 登録定員が最大29名であり、担当も20〜25名程度と比較的少人数。 一人ひとりとじっくり向き合う必要がある。 |
| ケアプラン作成 | 他の事業所や行政、病院などと連携し、プランを作成 | 「通い・泊まり・訪問」を一体的に支援するサービス形態で、生活全体をトータルに支えるプランを作成 (事業所内でのサービスが中心) |
| 求められること | 色々な事業所と関わるため、「幅広い知識と行動力」、「調整力」が必要。 | 利用者様やご家族と密に関わるため、「細やかな支援力」と「観察力」が必要。 |
| 特徴 | 多人数・多事業所を横断的に支援。 | 少人数・同じ場所で生活全体を支援。 |
違い②:介護業務の「兼務」の有無
居宅ケアマネは原則として介護現場業務を兼務しません。
ケアプラン作成やモニタリング、各事業所との連携や調整が主な業務で、デスクワークや訪問中心の仕事となります。
一方、小規模多機能ケアマネは、介護現場を兼務することが多いです。
通い・泊まり・訪問の現場に入り、直接利用者様と関わりプランを作成します。現場での気づきや細かな変化に対応したプランが必要となります。
| 項目 | 居宅ケアマネ | 小規模多機能ケアマネ |
|---|---|---|
| 介護業務との兼務 | 原則として介護現場業務を兼務しない | 介護現場(通い・泊まり・訪問)を兼務するのが特徴 |
| 業務内容 | ケアプラン作成、モニタリング、事業所との連携調整。デスクワークや訪問中心 | 現場に入り、利用者様と直接関わる。食事介助・入浴介助なども行いながら生活全体を支援し、ケアプランを作成 |
| ケアプランの特徴 | 面談や事業所の報告書をもとにプランを見直し、利用者様の状態把握しながらプランを作成 | 現場感覚を活かして、より細かで、個人個人に応じたプランを作成 |
違い③:連携先(外部か、ほぼ内部か)
居宅ケアマネは、サービス提供を行う事業所がほとんど外部にあります。
そのため、多職種・多事業所との連携や調整が必要です。
電話やメール、FAX、会議などを利用し、情報共有を行います。
担当者会議では進行役として、各事業所の意見や今後の方針をまとめていく必要があり、調整力が必要です。
小規模多機能ケアマネは、「通い」「泊まり」「訪問」すべてが同じ事業所で完結します。
ケアマネ・看護職・介護職などが常に同じチームで働くため、情報共有がスムーズに行え、関係の構築もできやすいです。
ミーティングや日々の会話の中で、利用者様の状態を把握し、ケアプランに反映していくため、チームでのケアの一体感とスピード感が魅力です。
| 項目 | 居宅ケアマネ | 小規模多機能ケアマネ |
|---|---|---|
| 連携先 | サービス提供事業所はほとんどが外部にある | 「通い」「泊まり」「訪問」すべてが同一事業所内で完結 |
| 連携方法 | 電話やメール、FAX、会議などを利用し、外部と情報共有 | 同じチーム(介護職・看護職など)との日常的な情報共有やミーティングで連携 |
| 求められるもの | 外部との関係構築・調整力・コミュニケーション力 | チームワーク・協調性・現場での観察力 |
| 特徴 | 外部の事業所と調整が大切。広いネットワークと高い調整力が必要 | 同じ事業所内で完結。チーム連携でスピード感のある支援ができる |

小規模多機能で働くために必要な資格と人員配置
職種ごとの人員配置基準(管理者、ケアマネ、介護・看護職員)
小規模多機能型居宅介護は、利用者様が「通い」「訪問」「泊まり」を柔軟に組み合わせて利用できる地域密着型サービスです。
ここでは、その人員基準と必要な資格をわかりやすく紹介します。
| 職種 | 配置基準 | 業務内容 | 必要資格 |
|---|---|---|---|
| 管理者 | 1名(常勤・専従が原則) 介護支援専門員(ケアマネ)との兼務可だが、常勤・専従が原則 3年以上認知症の介護従事経験があり、認知症対応型サービス事業管理者研修を修了した者 | 事業所の運営管理、職員の統括、利用者支援の総合調整 | 原則として 「3年以上の認知症介護従事経験」 「認知症対応型サービス事業管理者研修の修了」 |
| ケアマネ(計画作成担当者を兼務する場合が多い) | 登録定員29人以下(1事業所)につき1名以上 小規模多機能型サービス等計画作成担当者研修を修了した者 | 計画作成、サービス調整、モニタリング | 介護支援専門員 (ケアマネジャー) |
| 看護職員 | 1名以上(常勤換算、または訪問看護ステーションとの連携等) | 健康管理、服薬管理、医療的処置 | 看護師または准看護師 |
| 介護職員 | 利用者の数に応じて適切に配置(常勤換算で) 通い・泊まり・訪問を一体的に担当。 | 入浴・排泄・食事介助、通い・泊まり・訪問の支援 | 必須ではないが、以下の資格があると採用・待遇で有利 介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級) 介護職員実務者研修 介護福祉士 |
ケアマネ(計画作成担当者)に必要な資格・研修
小規模居宅介護事業所のケアマネは、利用者様一人ひとりに合わせて、「通い」「訪問」「泊まり」をどう組み合わせるか、どんな支援をどの職員が行うかをまとめた「小規模多機能型居宅介護計画」を作る専門職です。
人員基準上、業務に支障のない範囲で介護職など他の職種との兼務は可能です。
ケアマネとしての実務経験がある人が望ましいですが、法律上の明確な年数要件はありません。
また、介護支援専門員の資格を持っていても、小規模多機能でケアマネをするには追加で都道府県が実施する研修が必要です。
| 研修名 | 小規模多機能型居宅介護等計画作成担当者研修 |
| 内容 | 小規模多機能サービスの仕組み 通い・泊まり・訪問の一体的運営 個別支援計画の作成方法などを学ぶ |
| 実施主体 | 都道府県 |
※この研修は都道府県によって名称が少し異なりますが、「小規模多機能型居宅介護の計画作成担当者研修」「複合型サービス計画作成研修」などと呼ばれています。
研修は年に数回、都道府県や指定研修機関が開催しています。
新しく小規模多機能に配属されるケアマネである場合は、 配属前または就任後早めに受講し、他事業所で経験があるケアマネは、受講済み証明書を提出すれば業務がすぐに行えます。
介護職員・看護職員に必要な資格
介護職員として働く場合
介護職員として働く場合には、必須資格が無く、未経験でも働くことは可能ですが、2024年4月から、無資格で介護に直接携わる職員に対して「認知症介護基礎研修」の受講が義務化されました。
「無資格で介護に直接携わる職員」が対象範囲であり、採用後1年以内の受講という猶予期間があります。
【出典】令和3年度介護報酬改定に関する審議報告の概要(厚労省)
介護の研修・資格(厚労省)
無資格でも「認知症介護基礎研修」を受講したら働くことは可能ですが、介護業務を行うためには一定の知識や技術が必要です。
多くの事業所では以下のいずれかの資格を求めます。
- 介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)
- 介護職員実務者研修(旧ホームヘルパー1級)
- 介護福祉士
看護職員として働く場合
看護師として働く場合には、看護師か准看護師の資格が必須です。
看護職員は、小規模多機能型居宅介護では、必ず配置が必要です。
小規模多機能の仕事に向いている人の特徴
柔軟な対応力があり、マルチタスクが得意な人
小規模多機能では、サービス形態が多様なため、臨機応変な対応が求められます。
利用者様の体調や希望、家族の都合など、日々状況が変わるため、それに応じてサービスを組み替える必要があります。
急な泊まりの依頼や訪問が必要になった時も落ち着いて、職員を確保し対応にあたるといった柔軟な対応力が求められます。
また、「通い・訪問・泊まり」を状況に応じて、複数の業務を同時並行で行う力が求められます。
多様な業務を、その日の状況を判断しながらこなしていく必要があります。
午前中は介護職員や送迎職員として、午後は訪問介護員として、泊まりがある場合は泊まりの準備などマルチタスクが求められる状況が多々あります。
利用者とじっくり向き合った支援がしたい人
小規模多機能では、「通い」「訪問」「泊まり」などのサービスをすべて同じスタッフが行います。
そのため、利用者様との関係が築きやすく生活全体を通して関わることができるのが良い点です。
一人の人生や生活にじっくり寄り添う支援が可能となり、利用者様やご家族のニーズの把握や支援方針も決めやすいです。
利用者様のペースを大事にし、できることできないことを把握し必要な支援を見極め生活を継続していくという視点が大切です。
このように、他のサービスと違う点は、一人ひとりとじっくりと向き合うことができることです。関係を築きながら支援をしていきたい方には向いている仕事となります。
チームワークを重視して働ける人
看護職員、介護職員、ケアマネジャーなど、様々な職種が連携して支援を行うため、立場や考え方の違う他職種とお互いの意見を尊重し、協力しながら働いていくことが大切です。
また、事業所内だけではなく、家族様や地域の方々とも関わることが多いです。
そのため、チームとして利用者様を支援していくという想いを大切にし、よりよい支援に繋げる必要があります。
小規模多機能型居宅介護の仕事に関するFAQ
まとめ
小規模多機能は、地域密着型の介護サービスとして、利用者様の「住み慣れた地域で暮らしていきたい」という願いを支える重要な事業所です。
ケアマネは、個別のケアプラン作成だけではなく、時には現場の職員として、利用者様と密に関わっていくため、より個を重視したケアプランを作成でき、やりがいをもって働ける職場です。
様々な業務をこなしていく必要があるため大変さもありますが、「人とのつながり」や「住み慣れた地域で生活を継続していく」ということを大切にできる方にとっては、非常に魅力的な職場といえます。
小規模多機能で働きたい、または他の介護施設も検討したい方は、介護職専門の転職支援サービス「ケア人材バンク」へぜひご相談ください。
気になる給料面や福利厚生など細かな情報も掲載しています。
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