介護支援専門員(ケアマネージャー)としてのキャリアに、さらなる専門性と信頼性をプラスしたいと考えていませんか?
「認定ケアマネ」は、より質の高いケアマネジメントを提供するために、日本ケアマネジメント学会が創設した民間資格です。
認定資格を取得することで、「複雑なケースへの対応力や多職種連携のスキルを磨きたい」「後進の指導や地域支援に積極的に関わりたい」そんな想いを形にできます。
本記事では、認定ケアマネとは何か、取得方法・得られるメリット・取得後のキャリア展望まで解説します。
ケアマネとして活躍の場を広げたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
- 認定ケアマネはケアマネジャーの専門性を高める民間資格で、複雑な事例への対応力や多職種連携スキル向上の証明ともいえます。
- 資格取得には実務経験と実施試験の合格が必要で、申請書類の準備や費用がかかります。
- 認定ケアマネになることで利用者からの信頼性向上、事業所内での評価向上、主任ケアマネへの早期キャリアアップなどのメリットが期待できます。
認定ケアマネとは?その役割と意義
認定ケアマネは、ケアマネジャーとしての専門性や実践力を高めることを目的に、日本ケアマネジメント学会が2003年に創設した民間の資格です。
資格取得することで、ケアマネジメントに関する総合的なスキルを有していることの証明となり、主任ケアマネジャーを目指す際にも、必要な実務経験が短縮されるなど、キャリアのステップアップに役立ちます。
より専門的なアセスメントの実施
認定ケアマネは、利用者の状態や生活背景を的確に把握し、より深いアセスメントを行う力が求められます。
表面的な情報収集ではなく、本人の価値観や希望、潜在的な課題にまで踏み込んだ分析により、真のニーズに合った支援につなげていきます。
高度なアセスメント力は、複雑化・多様化する現代の介護現場において、ますます必要とされているスキルのひとつです。

困難事例への対応と指導
認定ケアマネは、虐待やネグレクト、多重課題を抱える世帯など、対応が難しいケースに対しても冷静かつ柔軟に対応します。
また、困難事例に直面している同僚ケアマネジャーの相談役として、専門的な視点から助言を行い、チーム全体の課題解決をリードする役割も担います。
地域包括ケアシステムにおける連携推進
認定ケアマネは、単に個別支援を行うだけでなく、地域全体の福祉資源を有効に活用する役割もあります。
地域包括支援センター・医療機関・行政・ボランティア団体などと積極的に関わりながら、地域包括ケアの要となる存在として活躍します。
住み慣れた地域で誰もが安心して暮らし続けられる仕組みづくりにも貢献できるでしょう。
多職種協働による質の高いケアプラン作成
医師・看護師・リハビリ職・介護スタッフ・福祉用具専門相談員など、多職種と連携しながら支援を組み立てるのがケアマネの仕事です。
認定ケアマネは、それらの職種との調整役として高いコミュニケーション力とコーディネート力が求められます。
多職種の専門知識を理解し、「それぞれの立場を尊重しながらチーム全体で最適なプランを作成する」その過程を主導できるのが認定ケアマネの強みです。
後進の育成とチーム全体のスキルアップ
現場では、若手ケアマネや実務未経験の職員も増えています。
認定ケアマネは、後進の育成においても重要な役割を担い、実践的な指導や助言を通じて、職場全体のスキル底上げを目指します。
単なる“ケアマネ”ではなく、“学び続けるケアマネ”として、チームに安心感と成長機会をもたらす存在です。

認定ケアマネになるための要件と道のり
認定ケアマネになるには、実務経験のほか、資格認定試験に合格しなければなりません。
資格取得までの道のりを紹介します。
一定期間以上の実務経験
認定ケアマネを目指すには、介護支援専門員(ケアマネジャー)としての実務経験が必要となります。
日本ケアマネジメント学会の会員であれば「2年以上の会員歴とケアマネとしての実務経験」、非会員であれば「ケアマネとしての通算3年以上の実務経験」が必要です。
実務経験に含まれる業務としては、以下が認められています。
- 居宅介護支援
- 地域包括支援センターの介護予防支援担当
- 小規模多機能型居宅介護・看護小規模多機能型居宅介護
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
- 特定施設入居者生活介護(地域密着型特定施設入居者生活介護含む)
- 介護老人福祉施設(地域密着型老人福祉施設入所者生活介護含む)
- 介護老人保健施設
- 介護療養型医療施設
- 介護医療院
出典:日本ケアマネジメント学会

認定ケアマネの申し込みで必要なもの
認定ケアマネの申請には以下の書類を揃えて提出します。
- 認定ケアマネジャー資格認定試験個人票
- 認定ケアマネジャー資格認定試験申請書
- 介護支援専門員証の写し
- 実務経験証明書(3年以上の実務経験の証明)
- 担当事例数及び担当事例一覧
- 資格認定試験用事例概要3事例
- 事例概要にかかる「居宅(施設)サービス計画書(1)・(2)」・アセスメント票・サービス担当者会議の要点(第4表)も含む
必要な書類は、日本ケアマネジメント学会のホームページからダウンロードできます。
準備物が多いため、提出の際は「チェックリスト」を参考に漏れがないように準備しましょう。
認定ケアマネジャー試験における書類審査と通知
申請された書類は、「認定ケアマネジャー資格認定実施部会」にて確認され、受験資格を満たしているかどうかの審査が行われます。
この段階では提出された事例の内容については審査の対象になりません。
提出書類に不備があった場合に限り、事務局から個別に連絡がありますが、受験資格が認められた方には、試験日や会場などの詳細を郵送にて通知されます。
受験日時については変更ができないため、通知に記載された日程で受験できるようスケジュールを調整しましょう。
認定ケアマネジャー資格認定試験の実施
資格試験といえば筆記試験を想像される方が多いかもしれませんが、日本ケアマネジメント学会の「認定ケアマネジャー試験」は、口頭試問形式で行われるのが特徴です。
口頭試問では、事前に提出した自分自身の担当事例をもとに、試験官との質疑応答が行われます。
現場での実践力やケアマネジメントに対する考え方が問われる、実務に即した内容です。
試験に合格すると、学会より正式に「認定ケアマネ」としての認定を受けることができます。
令和7年度の試験日程は以下の通りです。
第1回 | 令和7年10月18日(土)・19日(日) |
第2回 | 令和7年11月8日(土)・9日(日) |
第3回 | 令和7年11月15日(土)・16日(日) |
会場:全国家電会館(東京都文京区湯島3丁目6番1号)
試験日に変更の可能性があるため、受験票や、日本ケアマネジメント学会「認定試験のご案内」で事前に確認しましょう。
定期的な更新制度
認定ケアマネの資格は、試験に合格し登録された翌年度の4月1日から、5年間の有効期間が設けられています。
資格を継続するには、5年ごとに更新手続きを行う必要があり、日本ケアマネジメント学会が主催する学術大会や各種研修への参加実績が必要です。
認定ケアマネ資格認定試験に必要な費用
申し込みや試験にかかる費用は、日本ケアマネジメント学会の会員かどうかで異なります。
項目 | 学会会員歴2年以上 | 学会会員歴2年未満 または非会員 |
---|---|---|
書類審査料 (申請時) | 7,000円 | 10,000円 |
口頭試験料 (受験資格通知後) | 25,000円 | 35,000円 |
登録・認定証料 (試験合格後) | 8,000円 | 12,000円 |
合計 | 40,000円 | 57,000円 |
認定ケアマネの資格を取得するメリット
認定ケアマネの資格を取得すると、さまざまなメリットがあります。
ひとつずつ見ていきましょう。
専門知識・技術の体系的な習得
日本ケアマネジメント学会の会員であることが前提となりますが、認定ケアマネの資格を取得すると、「認定ケアマネジャーの会」への入会が可能となります。
認定ケアマネジャーの会は、資格を取得したケアマネジャーがさらにスキルを磨くための学びの場として設けられた組織です。
会員は、より専門性の高いケアマネジメント力を身につけることを目的とした各種研修や研究活動に参加でき、自身の実践力や専門性を高める機会を得られます。
利用者・家族からの信頼性向上
認定ケアマネの資格を持っていることで、「この人なら安心して任せられる」と感じてもらいやすくなります。
ケアマネジャーは制度や計画を立てるだけでなく、利用者や家族の悩みに寄り添いながら、関係機関との調整も担う存在です。
そのため、知識や経験に裏打ちされた信頼感が非常に重要になります。
認定資格を取得していることで、利用者や家族にとっては「専門性が高い」「常に学び続けている人」といった印象を与え、相談のしやすさや信頼性の向上につながります。
また、名刺や職員紹介などに「認定ケアマネジャー」と記載されているだけでも、専門職としての自覚と誇りを伝える有効な手段になります。
所属事業所内での評価向上とキャリアアップ
認定ケアマネジャーはまだ全国でも少なく、希少価値の高い資格です。
令和5年5月時点では全国に2,213名しかおらず、資格を持っていること自体が高度なスキルを有している証となり、評価や昇進において大きなアピールポイントになります。
主任ケアマネを目指しやすくなる
認定ケアマネの資格を取得していると、主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)を目指す際に必要となる実務経験年数が短縮されます。
通常は介護支援専門員としての実務経験が通算5年以上必要です。
しかし、認定ケアマネの認定を受けることで、3年に短縮されます。
主任ケアマネは、現場で働くケアマネジャーたちを支える立場であり、チームをまとめるリーダー的存在です。
地域包括支援センターや居宅介護支援事業所では、主任ケアマネの配置が義務づけられているため、資格を取得することで活躍の幅が大きく広がります。
認定ケアマネの活躍の場と今後の展望
認定ケアマネは、ケアマネジメントの高度な専門性を備えたプロフェッショナルとして、さまざまな現場で期待されています。
従来のケアマネジメントにとどまらず、地域包括ケアシステムの中核を担う存在として、活躍の場は今後さらに広がっていくと考えられます。
認定ケアマネがどのような場所で活躍できるか、また今後どのような役割が求められていくのか見ていきましょう。
地域包括支援センター
地域包括支援センターは、高齢者が住み慣れた地域で自立して生活を続けられるよう支えるための総合相談窓口です。
ここで求められるのは、単なるケアプラン作成ではなく、地域全体を通して、予防支援や高齢者虐待の対応・困難事例の支援・地域資源の開発や調整を担う力です。
認定ケアマネは、高度な知識と経験を生かし、包括的な支援の中心人物として、行政や多職種との橋渡し役を担います。
居宅介護支援事業所
ケアマネの一般的な勤務先である居宅介護支援事業所でも、認定ケアマネの存在感は大きくなっています。
特に、医療ニーズの高い利用者や、複雑な家庭環境を持つケースなど、通常のケアマネでは対応が難しい事例を積極的に引き受け、安定した支援を提供できるでしょう。
また、事業所の教育担当として、後輩ケアマネの育成や相談役を担い、職場全体の質を底上げする役割を果たします。
医療機関との連携
医療と介護の連携が重視される現在、病院・クリニック・訪問看護ステーションなどとの協働は欠かせません。
認定ケアマネは、医療知識と調整力を活かし、退院支援や終末期ケア・在宅療養支援などにおいて、医療職との円滑な情報共有や連携体制の構築を主導できます。
特に、医療ニーズの高い高齢者が地域で生活を継続するためには、認定ケアマネのような高度な知識と調整力が求められるのです。
教育・研修機関での活躍
ケアマネ育成の場でも、認定ケアマネの活躍は不可欠です。
研修講師や実習指導者として、実務経験に基づくリアルな指導を行うことで、次世代のケアマネジャーの育成に貢献できます。
認定ケアマネ取得後のキャリアパス
認定ケアマネの資格を取得することは、単なるスキルアップにとどまりません。
高度な知識と実践力を証明するこの資格は、キャリアの選択肢を広げ、より専門性の高いポジションへの道が開かれます。
介護保険施設・事業所の専門職
認定ケアマネの知識と経験は、介護保険施設や各種事業所において「相談支援の要」として重宝されます。
特別養護老人ホームやグループホーム、デイサービスなどの現場では、複雑なニーズや多様な価値観を持つ利用者への支援が必要です。
さまざまな場面で認定ケアマネは、他職種との調整を円滑に行いながら、施設全体のケアマネジメントの質を向上させる存在として活躍できるでしょう。
また、スタッフの相談役や指導役を担い、現場のスキル底上げにも大きく貢献できる人材として活躍が期待されます。
主任介護支援専門員(主任ケアマネ)
認定ケアマネを取得していると、主任介護支援専門員研修の受講要件である実務経験年数が通常の「5年」から「3年」に短縮されます。
主任ケアマネは、現場のケアマネジャーを支援・指導し、質の高いサービス提供を組織的に推進する立場です。
制度の理解・倫理観・多職種連携の調整力など、幅広いスキルが求められるこの役割において、認定ケアマネで得た実践力と分析力は強みとなります。
地域包括支援センターとの連携や、地域ネットワークの形成にも主体的に関わることが期待されます。
地域包括支援センター職員
地域包括支援センターは、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう支援する中核機関です。
介護予防ケアマネジメント・総合的な相談支援・権利擁護・虐待防止など、幅広い分野での対応が求められます。
認定ケアマネは、高度な課題解決力や多職種協働の調整力を持つため、地域包括の職員として即戦力になるでしょう。
特に困難ケースの対応や制度横断的な連携において、リーダーシップを発揮する場面も多く、行政との調整役や地域資源の開発にも貢献することが期待されます。
まとめ
認定ケアマネの資格は、単なる肩書きではありません。
専門性を証明し、利用者・家族・他職種からの信頼を高められるだけでなく、主任ケアマネへの道や教育者としての活躍が期待されています。
また、学会活動や事例発表などを通じて、自身の知識を発信し、業界全体のレベルアップを促す存在としても活躍の場が広がるのです。
今後は、認定ケアマネの指導力や発信力が、制度の発展やケアマネジメントの質の向上を支える鍵となるでしょう。
自分の専門性を見つめ直し、次なる挑戦に踏み出してみてはいかがでしょうか。