「子どもたちの成長を支える仕事がしたい」
「児童発達支援に興味があるけれど、具体的な仕事内容や必要な資格がよく分からない」

就職や転職を検討する中で、そんな疑問や不安をお持ちではないでしょうか。

児童発達支援は、障がいのある未就学児に対し、遊びや療育を通じて将来の自立に向けた「発達の土台づくり」を行う大切な場所です。
保育士や児童指導員といった専門職はもちろん、未経験からチャレンジできる職種もあり、近年やりがいのある仕事として注目が高まっています。

この記事では、働くスタッフの視点から、現場での具体的な仕事内容や職種ごとの役割、よく比較される「放課後等デイサービス」との違いについて詳しく解説します。

また、実際に働くうえで感じる「やりがい」や「大変さ」といったリアルな情報も紹介しますので、自分に合った働き方を見つけるための参考にぜひご活用ください。

目次

この記事の要点まとめ
  • 児童発達支援の目的と対象児童の特性について簡潔にまとめています。
  • 児童発達支援での主な仕事内容と、必要なスキルについてわかります。
  • 児童発達支援で働くうえでのやりがいや大変さについて解説しています。

児童発達支援とは? 働く前に知るべき基本

児童発達支援とは、小学校に上がる前の未就学児を対象とした、発達の課題や障がいのあるお子様向けの福祉サービスです
小学生からは放課後等デイサービスに移行するため、児童発達支援では、発達の段階に合わせて、就学に向けた集団生活の適応や、読み書きなどの基礎的な力を育む支援を行います。

 目的:未就学児の「発達の土台」を支える療育の場

児童発達支援では、日常生活の基本的な動作の習得など、発達の土台となる力を育てる支援を行います。

トイレや食事の練習、遊びやレクリエーションを通じた集団生活への適応、文字や数の理解など、就学後に小学校生活を送りやすくするための基礎作りが中心です。

これらの支援は、厚生労働省が定める5領域(健康・生活、運動・感覚、認知・行動、言語・コミュニケーション、人間関係・社会性)に沿って支援を行います

児童発達支援お子様とのコミュニケーションの様子

 対象となるお子様(どのような特性を持つお子様と接するか)

児童発達支援では、様々な発達特性や障がいのあるお子様たちと関わります。施設の方針によって受け入れ体制は異なりますが、主な特性は以下の通りです。

特性・名称現場でよく見られる様子や関わりの特徴
ASD(自閉スペクトル症)コミュニケーションの取り方に独自の特徴があったり、特定の物事への強いこだわりが見られたりすることがあります。
見通しを持てるような声かけや、視覚的な支援が安心につながりやすいです。
ADHD(注意欠陥・多動症)興味のあることに熱中するエネルギーがある一方で、じっとしているのが苦手だったり、衝動的に動いてしまったりする場面が見られます。
肯定的な声かけや、動と静の活動の切り替えが大切です。
知的障がい言葉の理解や習得がゆっくりで、自分の気持ちを伝えるのが難しい場合があります。
短い言葉で分かりやすく伝えたり、ジェスチャーを交えたりするなど、その子に合ったコミュニケーションを探します。
ダウン症全体的に発達がゆっくりな傾向があります。
人懐っこく明るい性格の子も多い一方で、筋肉の低緊張や合併症を持つ場合もあるため、体調の変化に気を配りながら、無理のないペースで活動を見守ります。
発達グレー・凸凹など診断はついていなくても、集団生活の中で困り感を抱えている子どもたちです。
「得意なこと」と「苦手なこと」の差が大きい場合もあるため、得意なことを伸ばしつつ、苦手な部分はスモールステップで支援します。
児童発達支援のお子様の特性について

共通して言えるのは、発達のペースが定型発達のお子様と比べてゆるやかであるため、言葉の発達や社会的な関わりに苦手さが見られることです。

児童発達支援では、こうしたお子様たちが小学校という集団生活の中でも安心して過ごせるよう、社会性やコミュニケーション面を中心に「発達の土台づくり」を行います。

  スタッフとして知っておくべき制度の概要(児童福祉法)

児童福祉法とは、18歳未満の全てのお子様が心身ともに健やかに成長し、社会の一員として生活できるようその権利と福祉を保障することを目的とした法律です。

この制度では、お子様の最善の利益を守ることが基本理念とされており、発達の支援だけでなく、心身の安全と人権の尊重が求められます。

また、職員は虐待の防止や不適切な対応を避けるための意識を持ち、お子様が安心して過ごせる環境づくりを行う責任があります。
制度の仕組みを理解することは、支援の目的を明確にし、お子様一人ひとりに合わせた関わりを行うための大切な土台となります。

参考出典:子ども家庭庁

児童発達支援スタッフの主な仕事内容

児童発達支援のスタッフは、お子様への療育を中心に、保護者対応や計画書の作成など多岐に渡る業務を行います。

ここでは、主な仕事内容を紹介します。

お子様への直接支援(個別療育・集団療育) 

お子様への直接支援は、大きく「個別療育」「集団療育」の2つに分かれます。
お子様の発達課題やニーズに合わせて、個別と集団のバランスを取りながら支援を進めていきます。

個別療育

発語の練習やボタンの留め外しなど、身辺自立を目的とした支援

集団療育

おもちゃの貸し借りや“待つ・並ぶ”といった社会的ルールを学ぶ活動など

療育内容は、児童発達支援管理責任者(児発管)が作成する個別支援計画書に基づいて行われます

保護者への支援(面談、相談対応、連絡帳の記入)

児童発達支援で働くうえで中心となるのは未就学児への療育ですが、同じくらい重要なのが保護者への支援です。

面談は主に児発管が行いますが、お子様の引き渡し時の申し送りや、発達に関するちょっとした相談対応、連絡帳への記入などは、お子様と関わるすべての職員が担います。

保護者対応の目的は、家庭と事業所が同じ方向を向いてお子様の成長を支えることです
発達特性を理解し、家庭での困りごとを共有しながら、施設での様子を丁寧に伝えることで、保護者の方が安心して子育てできる関係を築くことができます。

保護者様との対応

 支援の準備と事務作業(個別支援計画の作成補助、送迎業務、記録作成)

質の良い療育を行うために必要なのは支援の準備と、日々の事務作業が欠かせません。
お子様の成長に合わせて療育を行うには、同じ教材を使い続けるのではなく、新しい課題や目標に応じて、療育道具や教材を揃える必要があります

療育の指針となる個別支援計画は児発管が作成しますが、児童指導員等は日々の様子を共有し、作成の補助を行う重要な役割を担います。

また、日々の送迎業務や実績記録などの記録作業も、運営を支える大切な業務の一つです。
これらを丁寧に行うことで、お子様一人ひとりに合わせた継続的な支援が可能になります。

どんな職種がある? 役割と必要な資格

児童発達支援で働くために必要な資格や役割は一つではありません。
自分の持っている資格やスキルを現場で活かすことが可能か見ていきましょう。

 児童発達支援管理責任者(児発管)の役割と資格要件

児発管は児童発達支援事業所の中心的な役割を担う専門職です。
お子様の発達支援を一貫して進めるために、個別支援計画の作成や保護者との面談、スタッフへの指導・助言を行います。

また、相談支援事業所や医療機関など、関係機関との連携も重要な業務です。

主な役割と内容は以下の通りです。

主な役割内容
個別支援計画の作成保護者の面談をもとに支援方針を決定
スタッフへの指導支援内容を共有し、チーム全体の方向性を統一
関係機関連携相談支援事業所・医療機関・学校などとの情報共有
保護者支援相談支援や家庭での支援方法の助言
児童発達支援管理責任者の主な役割

児発管は事業所に1名の配置が義務付けられており、管理者との兼務も可能です。

児発管になるためには、障がい福祉分野での実務経験(5年以上など※保有資格による)に加え、所定の研修(基礎研修・実践研修)の修了が必要です。

 児童指導員・保育士の役割と任用資格

児童発達支援において、児童指導員・保育士はお子様の成長や発達をサポートする中心的な役割を担っています。

任用資格は以下のいずれかに該当する必要があります。
※詳細は厚労省の「児童指導員及び指導員の資格要件等」をご確認ください。

児童指導員の任用資格・地方厚生局長等が指定する「児童福祉施設職員養成校」などの養成施設を卒業している
・大学または大学院で、社会福祉学、心理学、教育学若しくは社会学を専修する学部、学科を専修する学科、またはそれに相当する課程を修めて卒業している
・児童福祉事業に3年以上従事した実務経験がある
・高等学校等を卒業し、児童福祉事業に2年以上従事した実務経験がある
・幼稚園教諭・小学校・中学校・高等学校のいずれかの教員免許を所持している
・社会福祉士、精神保健福祉士、理学療法士、作業療法士、または言語聴覚士の資格を所持している

出典:児童指導員及び指導員の資格要件等(厚生労働省)

これらの資格による業務の大きな違いはなく、いずれの職員も自身の専門性を活かしながらお子様の発達と日々の生活を支援します。

 無資格でも働ける?(指導員・補助スタッフ)

資格を持っていなくても、児童発達支援で働くことは可能です

ただし、保育士や児童指導員とは異なり、「指導員」や「補助スタッフ」としての勤務となります。
この場合、法律で配置が義務付けられている『基準人員』としてはカウントされないことが多く、サポート業務を中心に担当します

無資格で働く場合は資格不問の求人に応募して実務経験を積み、将来的に資格取得やスキルアップを目指すのがおすすめです。

 人員配置基準(何人のスタッフで何人のお子様を見るか)

児童発達支援や放課後等デイサービスでは、事業を行うために最低限配置しなくてはいけない職種・人員が定められており、人員配置基準は利用人数によって異なります

児童発達支援の人員配置基準は以下の通りです。
2024年度改定により配置基準や加算要件が一部変更されていますので、ご注意ください。

定員
(利用人数)
配置人数保育士・児童指導員
必要人数
〜10人2人以上2人以上
11〜15人3人以上2人以上
16〜20人4人以上2人以上

※うち1名は常勤職員である必要があります

参考:児童福祉法に基づく基準省令(厚生労働省より)

この人員配置基準は、お子様一人ひとりに十分な支援を行うために定められています。

スタッフとして働く際も、こうした体制の意味を理解し、チームで協力しながら支援にあたることが大切です。

「放課後等デイサービス」で働く場合との違い

「児童発達支援」とよく比較されるのが「放課後等デイサービス」です。
働くうえでの違いを、対象年齢や支援内容の観点から見ていきましょう。

 対象年齢の違い(未就学児 or 就学児)と業務の違い

児童発達支援では未就学児童を対象とするのに対し、放課後等デイサービスでは小学生から高校生までを対象としています。

年齢層や生活環境の違いなどにより、求められる支援内容やコミュニケーションスキルも異なります。

 支援内容・プログラムの違い(療育中心 or 社会性・学習支援)

児童発達支援では、身辺自立や言葉の習得など「生活の基礎づくり」を中心とした療育を行います。

一方、放課後等デイサービスでは、学校生活を前提とした社会性の向上や学習サポートが重視されます。

集団活動の中で協調性や思いやりを育てること、また学年が上がるにつれて生じやすい学習面の課題に対して個別支援を行うことも重要です。

 求められるスキルセットの違い 

児童発達支援と放課後等デイサービスでは支援内容やプログラムに違いがあるため、求められるスキルセットも異なります。
共通してお子様の発達を支える力が求められますが、それぞれの現場で特に重視されるスキルをまとめました。

児童発達支援・怪我や誤飲など事故を未然に防ぐ危機管理能力。
・排泄・着脱などの身辺介助スキル
・お子様の発達段階を見極め支援を調整する観察力
など
放課後等デイサービス・進路相談などへの対応力
・友人関係のトラブルや集団活動を支える社会性サポート力
・学習面をサポートする学習支援力
など
施設形態別_求められるスキルセット例

どちらの現場でもお子様の特性を理解し、チームで協力しながら成長を支える協働力も欠かせません。

児童発達支援で働く「やりがい」と「大変さ」

児童発達支援で働くうえでのやりがいはたくさんありますが、その裏で大変さも同様に存在します。
実際に働いてみて「思っていたのと違う…。」とならないよう、しっかりとチェックしていきましょう。

 やりがい:お子様の「できた!」瞬間に立ち会える、保護者と共に成長を喜べる

児童発達支援でのやりがいは、お子様の成長に直接関わることができ、できなかったことが「できた!」に変わる瞬間に立ち会えることです。

お子様の成長には、周囲のサポートが欠かせません。
自分の関わりによってお子様のできることが増え、保護者の方と一緒にその喜びを共有できたとき、大きなやりがいを感じられます。

集団療育の風景

大変さ:多様な特性への理解と対応、体力的な負担(送迎・活動)

一方で、児童発達支援の現場では、多様な特性を持つお子様と関わります。

これまでに出会ったことがないこだわりや行動に戸惑うこともあり、お子様やご家族に寄り添いながら安全に支援を続けることは決して簡単ではありません。

また、送迎や体を動かすような活動、複数人を見守る環境などは精神的にも体力的にも負担を感じることがあります。

それでも、お子様たちの笑顔や小さな成長を見られる瞬間が、この仕事の一番の原動力になります。

 児童発達支援の仕事に向いている人の特徴 

児童発達支援の仕事に向いている人とはどんな人でしょうか?
特徴をまとめましたので、自分に当てはまるものがあるかチェックしてみてください。

子ども好きで、小さな変化に気づける人 

児童発達支援は日々お子様と関わる仕事です。
子ども好きで、表情や行動の小さな変化にも気づき、それをポジティブに共有できる人は、児童発達支援の仕事に向いていると言えます。

お子様の行動を「できて当たり前」と捉えず、「頑張ったね!」と一緒に喜べる人は、お子様・保護者・スタッフの信頼を得られやすいです。

根気強く、ポジティブに関われる人

発達に特性のあるお子様の成長はゆるやかで、支援がすぐ効果として現れないこともあります。

その中で試行錯誤を続け、お子様に合った方法を探しながら前向きに支援を続けられる人は、この仕事にぴったりです。

チームワークや保護者との連携を大切にできる人

児童発達支援では、1日に複数のお子様が利用するため、職員同士での情報共有が欠かせません。
また、シフト制の施設では、前日の様子や保護者からの伝達をしっかり共有することも大切です。

チーム全体で支援を進め、保護者とも協力関係を築ける人が、信頼される支援者として活躍できるでしょう。

児童発達支援スタッフ間のコミュニケーション風景

まとめ

児童発達支援には、様々な特性を持つお子様が利用し、職員は一人ひとりの個性や課題に合わせて療育を行います。

未就学児童を対象とするため、生活習慣づくりや読み書きの基礎など、就学に向けた「発達の土台」を支えることが大きな役割です。
送迎や多様な特性への対応など大変さもありますが、その分支援を通してお子様の成長を間近で感じることができ、子供好きな方は特に大きなやりがいを持てる職場と言えます。

また、「ケア人材バンク」では障がい福祉で働きたい人向けの役立つ記事を多数掲載しているほか、児童発達支援管理責任者向けの転職支援サービスも行っています。
完全無料で転職サービスを受けることができますので、ぜひご登録のうえ転職エージェントにご相談ください。

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