児発管は業務量が多く、人手不足が慢性的な課題になっています。
こうした中、他業務との兼務によって、人員をやりくりしようと考える現場も少なくありません。
この記事では、児発管が兼務を行う際の人員配置ルールや、運営上の注意点をわかりやすく解説します。
目次
児童発達管理責任者(児発管)とは?その役割と業務
まずは、児発管という業務がどのような役割を担っているかを確認しましょう。
児童発達支援における重要な役割:個別支援計画の作成と管理
児発管の主な業務の1つが、利用者様ごとの『個別支援計画書』の作成と管理です。
これは、利用者様一人ひとりに合わせた療育目標を設定し、その支援内容を具体的に示す重要な書類であり、原則として6ヶ月ごとに更新する必要があります。
単に支援ニーズを把握して目標を立てるだけでなく、計画書を適切な時期に作成し、記録として保管・管理することが求められます。
こうした対応を怠ると、監査時に「支援の実施根拠が不十分」と判断され、減算対象となる可能性もあります。日頃から計画書の更新時期や保存状況には十分注意が必要です。
児発管の主な業務内容:アセスメント、計画作成、モニタリング、関係機関との連携など
児発管が作成する個別支援計画書には、作成をするための必要な手順があります。
内容は以下の通りです。
1.アセスメント | 保護者様と定期面談を行い、利用者様の発達状況や困りごとの確認を行う |
2.個別支援計画書作成 | アセスメントを基に、療育内容を記載した計画の作成を行う |
3.モニタリング | 6ヶ月に1度、モニタリングを行い目標の振り返りを行う |
4.関係機関との連携 | 相談支援員や学校などとモニタリングやケース会議を行う |
児発管の兼務に関する基本ルール:人員配置基準
児発管の兼務が可能かどうかは、法律で定められた人員配置に沿って判断されます。
特に「常勤換算1.0」などの基準を満たしているか、複数の事業所間で勤務時間が重複していないかといった点が重要です。
常勤換算1.0とは、週40時間勤務を1人分の常勤とみなして計算する基準で、非常勤職員の勤務時間も合算して判断されます。
児童発達支援事業と放課後等デイサービス人員配置基準
児童発達支援事業および放課後等デイサービスの人員配置基準は以下の通りです。
児発管の配置は常勤換算で1名以上が必要とされています。
役職 | 配置基準 | 備考 |
---|---|---|
管理者 | 常勤1名以上 | 他職種との兼務可 |
児童発達支援管理責任者 | 常勤1名以上 | 管理者との兼務可、ただし専任かつ常勤が1名必要。 |
児童指導員または保育士 | 利用児童が10名までの場合2名以上。うち1名は常勤 | 以降5名増ごとに1名追加 |
機能訓練担当職員 | 必要に応じて配置 | 理学療法士、作業療法士などの資格が必要 |
出典:児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準
(児童発達支援は第5条〜第7条、放課後等デイサービスは第66条〜第67条)
兼務が認められるケースと認められないケース
児発管は管理者との兼務は可能とされています。
また、児発管業務に支障がなければ、児童指導員や保育士などの直接支援業務も一部兼務が可能とされています。
ですが、配置基準上の児童指導員の人数として、算入することはできません。
また、全職種の兼務も不可とされています。

このように、児発管の兼務は「業務に支障がない範囲」や「全職種の兼務は不可」など、条件付きの場合で認められております。
職種 | 兼務の可否 | 必要資格 | 条件・注意点 |
---|---|---|---|
管理者 | 可能 | 不要 | 管理業務に支障がない範囲に限る。 |
児童指導員 保育士 | 条件付きで可能 | 各職種の資格 | ・児発管業務に支障がない範囲に限る。 ・配置基準上の人員として算入は不可。 |
送迎ドライバー | 条件付きで可能 | 普通運転免許 | ・児発管の勤務時間とは明確に分けて管理が必要。 ・緑ナンバーの送迎には第二種運転免許が必要。 |
常勤換算と兼務の考え方
常勤換算とは、非常勤職員を含む全職員の勤務時間合計を、常勤職員の基準(原則週32時間)で割って換算する方法です。
児発管については、一般的に週40時間勤務で常勤1.0と見なされます。
この基準を満たしていれば、他業務との兼務も可能です。
※週32時間を下回る場合は、週32時間が基準となります
ただし、複数の事業所で勤務時間を合算する場合は、実働記録や業務内容の明確化が求められます。
児発管を兼務するメリット・デメリット
児発管が業務を兼務することは可能ですが、それぞれメリット・デメリットが存在します。
得られるメリットだけでなく、発生するリスクや課題についても見ていきましょう。
メリット:人材不足解消と事業運営効率化
児発管は全国的に人材不足が深刻化しており、必要な配置基準を満たせずに悩む事業所も少なくありません。
こうした中、条件を満たしたうえでの兼務は、人材不足が解消され、事業の運営の継続や効率化を図ることができます。
また、経営面でも人件費といったコストを抑えることが可能となります。
特に、同一法人内で複数の事業所を運営している場合、児発管のスキルやノウハウを横断的に共有できることで、支援の質や業務の効率化にも繋がる可能性があります。
メリット:多角的な視点と経験獲得
他の業務を兼務することは、多角的な視点で業務を行うことができ、経験の獲得にも繋がります。
たとえば、児発管業務と管理者業務を兼任することで、マネジメント能力や施設の運営についても経験を積むことができるため、スキルアップや今までとは違った視点で業務や利用者様と関わることができるようになります。
デメリット:業務負担増加と責任集中
業務量の多い児発管が管理者や他の業務と兼任することは、過重労働や責任が集中し過ぎるリスクがあります。
そのため、心身的な負担が掛かり過ぎないよう、注意や体制の工夫が必要です。
デメリット:人員配置基準を満たす必要性
児発管が業務を兼務するためには、配置基準を満たす必要があります。
複数の事業所で児発管を兼務する場合は、この配置基準を満たすことが難しい場合があるため、注意が必要です。
児発管兼務における注意点と運営ポイント
兼務を実現するためには、組織全体での工夫や明確なルールの整備が欠かせません。
注意点や運営のポイントを理解し、支援の質を下げない運営を行うための工夫を見ていきましょう。
適切な勤務時間管理と業務分担
児発管は元々兼務量が多く、他の業務や複数の施設と兼務することで、勤務時間内に業務が終わらず、残業する恐れがあります。
残業が続けば心身に負担がかかり、支援の質が低下する可能性も否めません。
こうした事態を防ぐためには、シフト管理やタスク分担を事前に明確化し、適切な人員配置基準を確実に満たす体制を整えることが大切です。
事前の調整により、業務過多や、人員配置不足のリスクを軽減できます。
関係機関との連携と情報共有徹底
支援の質や継続性を保つためには、関係機関との連携や、情報の一元管理が重要です。
児発管が業務の兼務を行うと、支援計画やモニタリング、会議録などの本来の児発管の作成すべき書類の管理が煩雑になる可能性があります。
その状態で医療機関・保育園・学校・相談支援事業所などと連携を取ると、伝達漏れや対応の遅れなどの影響が出るかもしれません。
配置基準は満たせても、支援の質を保つためには関係機関とスムーズな連携が取れているかが大切です。

質の高い支援を提供するため体制整備
業務に追われる中では、支援の質を保ったり、質の高い支援を提供することが難しくなります。
支援の質を下げないためにも、定期的に体制の見直しを行い、業務分担の見直しや研修時間の確保などを行うことも大切です。
法令遵守と運営基準理解
児発管の兼務が制度として認められている場合でも、その運用が適切でなければ「配置基準違反」として、判断される恐れがあります。
厚生労働省の通知や運営基準を正しく理解し、勤務実態や業務内容が書面で確認できる状態を保つことが求められます。
たとえば、勤務時間の水増しや実質的な不在、支援計画の未作成などがあると、監査時に指摘され、指定の取り消しや減算の対象となる可能性もあります。
制度を正しく理解したうえで、実態に即した運営体制を整えることが大切です。
児発管兼務に関するQ&A
児発管を兼務するにあたって、よくある質問をまとめました。
現場で兼務を検討する際の参考にしてください。
はい、条件付きで可能です。
ただし、兼務を行うには以下の重要なルールがあります。
1.児発管の本来業務に支障がないこと
個別支援計画の作成やアセスメント、関係機関との連携といった児発管の業務に支障が出ない範囲でのみ、保育士や児童指導員として直接支援業務に入ることが認められます。
2.配置基準の人員として算入できないこと
これが最も重要なポイントです。兼務している児発管を、法律で定められた保育士・児童指導員の配置基準の人数に含めることはできません。
あくまで児発管は「児発管として1名」の配置であり、保育士・児童指導員は別途、基準を満たす人数を配置する必要があります。
はい、可能です。
児発管は原則として「専任(その業務に専ら従事すること)」と定められていますが、管理者との兼務は例外的に認められています。
多くの事業所で、管理者と児発管を兼務するケースが見られます。
ただし、管理者にも事業所全体の管理運営という重要な役割があるため、兼務によって児発管の業務、管理業務のどちらかが疎かになることのないよう、業務量のバランスを適切に管理することが大切です。
児発管と兼務できる職種は限られており、職種ごとに必要な資格の有無が異なります。
兼務が認められるかどうかは資格だけではなく、勤務時間や人員配置基準を満たしているかどうかも、重要な判断ポイントです。
事業所の指定権者(都道府県・市町村)の判断や地域のローカルルールによって、取り扱いが異なる場合があります。
詳しくは、事前に指定権者へ確認をする必要があります。
参考:他職種との兼務と必要資格
兼務する際の勤務時間は「常勤換算」の考え方に基づいて正確に管理される必要があります。
1週間あたり40時間勤務(=常勤換算1.0)を上限とし、事業所ごとの勤務時間配分を明確に記録することが求められます。
※週32時間を下回る場合は、週32時間が基準となります。
勤務表やタイムカードなどで、各事業所での実際の勤務状況を客観的に証明できるようにしておくことが重要です。虚偽や不明確な記録は、監査で指摘されるリスクがあります。
児発管業務を兼務することで利用者支援に影響が出るかどうかは、体制によって異なります。
適切な体制と時間管理が整っていれば、児発管が兼務をすることで支援の質が必ずしも低下するとは限りません。
ただし、兼務をすることでモニタリングの開催時期に遅れが生じたり、連携会議に参加ができないなどが生じると、結果的に利用者様への支援に影響が出る恐れがあります。
支援の一貫性を保つには、役割分担や情報共有などの体制を整え、質の高い支援が提供できる環境を整えておくことが大切です。
まとめ
児発管の兼務は、条件を満たし、適切な体制を整えることで実現可能です。
なにより大切なのは、利用者様に質の高い支援を提供し続けること。
そのためにも、人員配置基準や常勤換算のルールを正しく理解し、役割分担や勤務体制を事前にしっかりと整えておきましょう。
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