ケアマネジャー(ケアマネ)と社会福祉士は、どちらも相談援助の専門職です。
しかし、「具体的な仕事内容の違いは?」「資格取得の難易度や必要なスキルは?」「自分にはどちらが向いているんだろう?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
本記事では、ケアマネと社会福祉士の違いについて、役割や仕事内容、資格取得方法、求められるスキル、活躍の場などを比較して解説します。
それぞれの違いと共通点を理解し、あなたに合ったキャリア選択や今後の転職活動にお役立てください。
目次
ケアマネと社会福祉士:役割と目的の違い
ケアマネと社会福祉士は、共に相談援助の専門職ですが、その役割と目的は異なります。
ここでは、両者の役割と目的の違いについて解説します。
ケアマネの役割
ケアマネは、介護を必要とする高齢者やそのご家族にとって、介護保険サービスの”案内役”であり、”調整役”です。
主な役割は以下のとおりです。
- ケアマネジメント
ご利用者の心身の状況や生活環境、意向などをアセスメントし、必要な介護サービスを計画する - 給付管理
介護保険サービスの利用に伴う費用の管理と請求手続きを行う - サービス事業者と調整
ご利用者やサービスを提供する事業者とのコミュニケーションを円滑に行い、サービスが適切に提供されるよう調整する
その目的は、ご利用者が可能な限り住み慣れた自宅や地域で、自分らしい自立した日常生活を送れるように支援することにあります。
ケアマネの役割に関するより詳しい解説は、別記事『ケアマネージャーとは?』をご参照ください。
社会福祉士の役割
社会福祉士は、”暮らしの困りごと”全般に対応する相談援助の専門家、いわゆるソーシャルワーカーです。
病気や障がい、貧困、家庭問題など、さまざまな理由で日常生活に困難を抱えるあらゆる年代の方の相談に応じます。
社会福祉士の主な役割は相談援助と権利擁護です。
- 相談援助
相談者の話を丁寧に聞き、抱える問題を整理し、適切な福祉サービスや制度の情報を提供するなど、関係機関との連携を図る。 - 権利擁護
単にサービスに繋ぐだけでなく、本人の権利を守り、主体的に生活できるよう包括的に支援する。
社会福祉士は、社会福祉士及び介護福祉士法に基づく国家資格であり、医療機関や行政、福祉施設、地域包括支援センターなど、活躍の場は多岐にわたります。
社会福祉士の資格取得に関するより詳しい解説は、別記事『社会福祉士とはどんな資格?』をご参照ください。
仕事内容の違い
ケアマネと社会福祉士では、担う役割の違いから日々の業務内容も異なります。
ここでは、それぞれの具体的な業務を解説します。
ケアマネの主な仕事・業務内容
ケアマネの主な業務は、ケアプランを通して、必要なサービスを効果的に組み合わせて調整・管理することです。
ケアプランを作成する際のプロセスは以下の通りです。
- インテーク 初回面談。
- アセスメント
ご利用者の状況やニーズを詳細に把握し、課題を分析。 - ケアプラン原案作成
アセスメントに基づいてサービス内容・回数を計画。 - サービス担当者会議
ご利用者・ご家族やサービス提供事業者などとプランの内容を協議・調整。 - サービス事業者との連携
サービスが円滑に開始・継続できるよう事業者と連携。 - モニタリング
定期的にご利用者の状態変化やサービスの効果を確認し、ケアプランを評価・修正。
ケアプラン作成に関するより詳しい解説は、別記事『【文例付】ケアプラン作成について』をご参照ください。
このほか、要介護認定の申請代行や給付管理なども重要な業務です。

社会福祉士の主な仕事・業務内容
社会福祉士の業務は、多様な人々の生活上の困難に対し、相談に応じて解決に向けた包括的な支援を行います。
相談者の課題を明確にし、必要な情報や社会資源に繋げ、権利を守ることを目指します。
具体的には以下の通りです。
- インテーク 初回面談
- アセスメント
状況やニーズ、強みを把握。 - 支援計画の策定
アセスメントをもとに支援計画を策定。 - 支援計画の実施
面接での相談援助や情報提供などの直接支援に加え、関係機関との連絡調整や連携(医療・行政・福祉施設・NPO等と連携し、チームで支援することもある)。
このほか、判断能力が不十分な方を支える成年後見制度の活用支援や、虐待が疑われるケースへの介入といった権利擁護活動も社会福祉士の重要な仕事です。
社会福祉士は相談援助技術やネットワークを活かし、個人の問題解決とエンパワメント(相談者自身で問題を解決できるよう促すこと)を支援します。
資格取得の違い
ケアマネと社会福祉士では資格取得の道のりも異なります。
ここでは、それぞれの試験の概要や受験資格、科目、難易度などについて解説します。
ケアマネ試験について
ケアマネ試験の正式名称は「介護支援専門員実務研修受講試験」といい、都道府県ごとに実施される民間試験です。
試験合格後は、実務研修を修了後、介護支援専門員登録証が発行でき、ケアマネとして仕事ができるようになります。
試験で問われるのは、介護保険制度やケアマネジメントに関する専門知識のほか、実務経験に基づく応用力などです。出題形式は主に五肢複択のマークシート方式です。
介護保険制度は3年ごとに法改正があるため、最新情報の学習が欠かせません。
社会福祉士国家試験について
社会福祉士国家試験は、厚生労働大臣の指定を受けた社会福祉振興・試験センターが実施する国家資格試験です。
試験に合格し登録されることで社会福祉士として活動できます。
社会福祉士は高齢分野だけでなく、障がいや児童など、幅広い分野で活躍する資格です。
そのため、福祉全般の学習が必要です。
受験資格の違い
ケアマネ試験の受験資格を得るには、以下の2通りの実務経験が必要です。
- 医師や看護師、社会福祉士、介護福祉士などの法定資格保持者
- 高齢・障がい・児童分野や行政などで相談援助に従事している者
上記のいずれかの実務経験が5年以上(かつ900日以上)必要になります。
出典:別表1 受験資格コード(東京都福祉保健財団ケアマネジャー専用サイト)
出典:別表2 相談援助業務に従事する者(東京都福祉保健財団ケアマネジャー専用サイト)
一方、社会福祉士国家試験の受験資格には、以下のように多様なルートがあります。
- 福祉系4年制大学等で指定科目を履修し卒業するルート
- 福祉系短大等卒業後に実務経験を積むルート
- 一般大学等卒業後に一般養成施設(1年以上)を修了するルート
他にも学歴や実務経験によっても複数のルートがあるため、確認が必要です。
出典:社会福祉士国家試験 受験資格(資格取得ルート図)(社会福祉振興・試験センター)
試験科目の比較
ケアマネ試験の科目は「介護支援分野」と「保健医療福祉サービス分野」に大別されます。
対して社会福祉士国家試験は、「人体の構造と機能及び疾病」「心理学理論と心理的支援」など、福祉全般にわたる19科目群から出題されています。
それぞれの試験に関する詳しい解説は、以下の記事をご参照ください。
関連記事:ケアマネジャー試験の受験資格、申込方法、受験対策まで詳しく解説!
関連記事:社会福祉士国家試験について解説(新カリキュラム版)
難易度と合格率の違い
ケアマネ試験の合格率は、例年20%前後と低い傾向でしたが、令和6年は32.1%と高い合格率になっています。
実務経験者でも、専門知識の暗記や応用力、法改正への対応が求められ、かつ分野ごとに基準点以上の得点が必要です。
社会福祉士国家試験の合格率は、近年30%〜50%台で推移していますが、19科目群のうち、1科目群でも0点の科目があると不合格になります。
単純な合格率比較は困難ですが、ケアマネは専門深化、社会福祉士は広範囲の知識が求められ、共に計画的な勉強が必要不可欠です。
それぞれの合格率に関する詳しい解説は、以下の記事をご参照ください。
関連記事:ケアマネ試験の合格率・合格ラインは低い?
関連記事:社会福祉士 合格率の最新情報
求められるスキルの違い
ケアマネと社会福祉士は、ともに対人援助の専門職であり、多くの共通スキルが求められますが、役割や業務の特性から、重要視される能力の相違点もあります。
ここでは、両者に必要な代表的なスキルを見ていきましょう。
ケアマネに必要なスキル
ケアマネジャーに特に求められる主なスキルは以下の通りです。
- コミュニケーション能力
ご利用者やご家族、他職種と円滑に意思疎通を図り、情報を的確に伝える力 - 調整力
多様な関係者の意見をまとめ、最適なサービス利用に向けて合意形成へと導く力 - アセスメント力
ご利用者の心身状況や生活課題を正確に把握・分析し、適切な支援計画に繋げる力
これらのスキルは、ケアマネ業務全般で必要です。
的確なアセスメントに基づき、さまざまな関係者と円滑なコミュニケーションを取りながら調整する能力が求められます。
社会福祉士に必要なスキル
社会福祉士に特に求められる主なスキルは以下の通りです。
- 問題解決能力
複雑な課題を分析し、社会資源を活用して具体的な解決策を立案・実行する力 - 交渉力
相談者の権利を擁護し、必要な支援を得るため関係機関と折衝・調整する力

これらのスキルを駆使し、相談者自身が課題を解決できるよう支援します。
社会福祉士の業務の対象は、高齢・障がい・児童・生活困窮者など多岐にわたるため、各分野の制度をよく理解しておく必要があります。
勤務先・職場の違い
介護保険制度を軸に活動するケアマネに対し、社会福祉士はより広範な福祉分野で活動します。ここでは、それぞれの主な活躍の場を具体的に解説します。
ケアマネが活躍する職場
ケアマネの最も代表的な職場は以下の通りです。
- 居宅介護支援事業所
- 介護保険施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院など)
- 小規模多機能型居宅介護事業所
- 地域包括支援センター
居宅介護支援事業所や介護保険施設、小規模多機能型居宅介護事業所では、担当するご利用者のケアプランを作成します。
また、地域包括支援センターでは、権利擁護や要支援の方の介護予防に携わります。
社会福祉士が活躍する職場
社会福祉士の活躍の場は広範囲です。
- 医療機関(病院、精神科病院など)
- 福祉施設(高齢者施設、障がい者支援施設、児童養護施設など)
- 行政機関(市町村役場、福祉事務所など)
- 教育機関:小・中学校、高校など
- 社会福祉協議会
- 地域包括支援センター
医療機関では、医療ソーシャルワーカー(MSW)として、患者やご家族の相談援助や退院支援に携わります。
高齢者・障がい者・児童などを対象とした福祉施設では生活相談員や支援員として活動することが多いでしょう。
行政機関では、ケースワーカーとして、教育機関ではスクールソーシャルワーカー(SSW)として、社会福祉士はその専門性を多方面で活かしています。
どちらの資格がよいか?
ケアマネと社会福祉士はどちらも魅力的な専門職で、一概にどちらがいいとは言えません。
大切なのはあなたの興味やキャリアプランです。
ここでは、あなたに合うのはどちらか、考えるヒントを提示します。
高齢者の介護・福祉に深く関わりたいなら
ご利用者やそのご家族に対し、介護保険制度に基づく専門的支援を行いたいなら、ケアマネをおすすめします。
ケアプラン作成を通じ、個別のニーズに合わせたサービス調整で生活に密着した支援が可能です。
高齢者の自立支援やQOL※向上に直接貢献でき、現場経験も活かせます。
一人ひとりにじっくり向き合いたい方におすすめです。
Quality of Life(クオリティ オブ ライフ)…生活の質
幅広い分野で困っている人を支援したいなら
年齢や分野を問わず、困難を抱える方の支援をしたいという志向なら、社会福祉士の資格取得を目指すのがおすすめです。
高齢者、障がい者、子ども、生活困窮者など対象は広く、医療や行政、福祉施設など活躍の場も多彩です。
個別支援だけでなく、地域福祉の推進や制度改善といった広い視野での活動も可能です。
社会全体の福祉に関心がある方に向いています。
将来のキャリアプランで考える
ケアマネは主任ケアマネや独立開業など、高齢者ケアの専門家としてのキャリアがあります。
専門性を深めることで、特定の分野で有利にキャリアを築けるでしょう。
社会福祉士は多様な分野で経験を積むゼネラリストや、認定社会福祉士、管理職など幅広いキャリア展開が可能です。
ひとつの分野を追求したいか、多様な経験を積みたいか、あなたのキャリア志向で考えてみると良いでしょう。
なお、ケアマネや社会福祉士のキャリアプランについては、以下の記事もご参照ください。
関連記事:ケアマネのキャリアアップガイド
関連記事:社会福祉士はどのようにキャリアアップしていけばいい?
ケアマネと社会福祉士のダブルライセンス
両方の資格を持ち、ダブルライセンスとして働くことには多くのメリットがあります。
居宅介護支援事業所を開設しケアマネジメントを行いながら、成年後見人としての業務を請け負うことも可能です。
資格取得後もそれぞれに更新研修があり、時間と費用の負担がかかるという側面はありますが、専門性を掛け合わせることでより質の高い支援が実現できるため、ダブルライセンスは非常に強力な選択肢となります。
ケアマネと社会福祉士のダブルライセンスについては、別記事『社会福祉士のダブルライセンス取得で広がるキャリアアップについて』でも解説しているため、ご参照ください。
まとめ
ケアマネと社会福祉士はともに相談援助職です。
ケアマネは高齢者の自立支援を介護保険で支え、社会福祉士は幅広い分野で多様な困難への包括的支援と権利擁護を担います。
あなた自身の適性が活かせるのはどちらか、本記事が、最適な道を見つける一助となれば幸いです。
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